黒澤明 ~ 生きる

closeこの記事は 4 年 4 ヶ月 2 日 前に投稿されたものです。間違いに気づいたらその都度修正していますが、今読んだらおかしな点もあるかもしれません。ご了承ください。
 文字通り「生きる」ことについて、考えさせられる映画でした。
 生まれた者は必ず死んでゆかねばならず、一日生きたということは、その分、一日死に近づいたということです。そんなことは小さな子供でも知っていることですが、本当の意味で「生と死」が分かっているのか、と顧みずにおれません。  知識として知っている「死」はあくまでも他人事であり、どんなに親しい人の訃報を聞いても、その驚きは一時的なものでしかありません。  また、自分の死といっても遠い未来のことと思っています。「いつか死なねばならない」と分かっていても「まさか明日には」と思っているのが本音でしょう。その心は恐らく、明日になっても、明後日になっても変わらないと思います。ということは、いつまでも生きておれると思っていることになってしまいますが、そういう愚かな存在が人間の実態ではないでしょうか。
 その、今も昔も変わらぬ人間の愚かさに、「なぜ生きる」と問いかけているのがこの『生きる』です。主張もストーリーも、無駄なく分かりやすいと思いました。
 毎日を、煩雑極まる機構とそれが生み出す無意味な“忙しさ”の中で、意欲や情熱をすり減らしてしまった市民課長の渡辺勘治。“ミイラ”とあだ名付けられた彼の時間は「生きているとは言えない」、と冒頭でナレーションに言われてしまいます。つまり、明日死んでも、1年後に死んでも、30年生きていても何ら変わりのない人生なのです。直言すれば「生きる意味なし」「無駄な人生」。そんな人生、一体何なのか?何のために生きているのか?真剣に考えさせられるのは、自身が胃癌に蝕まれていることを知ったときです。「死」を考えることが、「生きる」ために如何に必要なことなのかを強く訴えかけてきます。
 渡辺だけでなく、あなたの人生がもしあと半年だったら?この「もし」が切実な現実問題として眼前に迫られた時、初めて私たちは「生きる」ことが出来る。そういうメッセージが、ストレートに伝わってくる作品でした。自由奔放に生きる小田切とよと接し、それまで無意味に感じていた市役所の仕事に意義を見つけ、彼が生まれ変わる場面で「ハッピーバースデー」と周囲が騒いでいる演出も、実に分かりやすかったです。死を意識し、生きる目的に向かって進むとき、人は逞しく生きられるのだと思いました(公園を造ることが本当の人生の目的になり得るかどうかはここでは別の問題として、、、)。
「あの、その、つまり……」と精気を失った喋りをする渡辺役の志村喬さんの演技も素晴らしく、そんな彼が使命感に燃えて動き出す場面を、通夜での思い出話として表現している手法も見事だと思いました。  親と子の心のすれ違いが描かれることによって、「なぜ生きる」を考える難しさが一層浮き彫りにされているように感じます。黒澤流メメント・モリといったところでしょうか。
 ところどころ日本語が聞き取れないところもありましたが、字幕付きで観ることが出来るのがDVDの有難いところです。

Links: グーグーパンダの語る人生の目的 黒澤明 ~日本映画 監督篇 黒澤明~ POOL SIDE 英語でことわざシリーズ 我思う、ゆえに我あり エイジアンジャーナル 明橋大ニ 他 ~ なぜ生きる 黒澤明 生きる 黒澤明の世界


キャスト
志村喬 – 渡辺勘治(市役所市民課長) 金子信雄 – 渡辺光男(勘治の長男) 関京子 – 渡辺一枝(光男の妻) 小堀誠 – 渡辺喜一(勘治の兄) 浦辺粂子 – 渡辺たつ(勘治の兄嫁) 南美江 – 家政婦 小田切みき – 小田切とよ(市役所臨時職員) 藤原釜足 – 大野(市民課係長) 山田巳之助 – 齋藤(市民課主任) 田中春男 – 坂井(市民課職員) 左卜全 – 小原(市民課職員) 千秋実 – 野口(市民課職員) 日守新一 – 木村(市民課職員) 中村伸郎 – 市役所助役 阿部九洲男 – 市会議員 林幹 – 土木部長 小川虎之助 – 公園課長 清水将夫 – 医師 木村功 – 医師の助手 渡辺篤 – 患者 伊藤雄之助 – 小説家 丹阿弥谷津子 – スタンド・バーのマダム 永井智雄 – 新聞記者 村上冬樹 – 新聞記者 青野平義 – 新聞記者 宮口精二 – やくざの親分 加東大介 – やくざの子分 堺左千夫 – やくざの子分(ノンクレジット) 広瀬正一 – やくざの子分(ノンクレジット) 宇野晃司 – やくざの子分(ノンクレジット) 千葉一郎 – 焼香する警官 三好栄子 – 陳情の主婦 菅井きん – 陳情の主婦 谷晃 – 飲み屋の親父 長濱藤夫(長浜藤夫) – 公園課職員 河崎堅男 – 市役所職員 勝本圭一郎 – 市役所職員 瀬良明 – 市役所職員 光秋次郎 – 市役所幹部(ノンクレジット) 鈴木治夫 – 市役所受付職員(ノンクレジット) 今井和雄 – 市役所受付職員(ノンクレジット) 安芸津宏 – 市役受付所職員(ノンクレジット) 津田光男 – 市役所受付職員(ノンクレジット) 加藤茂雄 – 市役所受付職員(ノンクレジット) 榊田敬二 – 市役所受付職員(ノンクレジット) 夏木順平 – 病院待合所の患者(ノンクレジット) 深見泰三、小島洋々、登山晴子、安雙三枝 – その他
以下の3人は、-特別出演-としてクレジットされている。 市村俊幸 – ジャズバー・ピアニスト 倉本春枝 – ジャズバー・ダンサー ラサ・サヤ – ヌード・ダンサー

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5件のコメント »
  1. SECRET: 0
    PASS: 6b846046d7ca2ce64df6f006f2e3c2d3
    恥ずかしながら、黒澤監督作品は『羅生門』しか観たことがありません。(小津監督は『東京物語』のみ。とほほ)
    この映画は絶対に観ます!

    先日テレビで松本幸四郎さんが主役を演じられていたようですが、時代設定が違うとはいえ、違和感を覚えました。
    『天才柳沢教授の生活』でも、全然教授っぽくなくて…。

    取り上げていただきありがとうございました。

    コメント by 晶子(Akiko改め) — 2007年10月14日 20:56

  2. SECRET: 0
    PASS: 6691fc7e69b32d0879c93714a75e5e9c
    コメントありがとうございます。

    これが私の初黒澤明となります。「羅生門」も観てみたいですね。

    最初のうちは評価の高いもの、有名なもの、薦められたものを手当たり次第に見てゆく予定です。

    コメント by チャーリー432 — 2007年10月15日 08:56

  3. SECRET: 0
    PASS: 6b846046d7ca2ce64df6f006f2e3c2d3
    テレビで観たのですが、衝撃を覚えました。
    あれがカラー作品だったら感じ方も違っていたでしょう。
    白黒だからいいんですよ(*´∀`*)
    断片的なのだけれど、あっちこっち場面を覚えています。
    外国人が憧れを募らせるのも無理はないですが、実際に来日したらがっかりしてそう。

    とりあえず、必修として、『生きる』と『七人の侍』が課題です。
    「観てない? あなたそれでも日本人ですか」と言われそう(´Д`)
    日本産のかっこいい、美しい古典作品をどんどん観たいと思っています。

    コメント by 晶子 — 2007年10月15日 10:58

  4. SECRET: 0
    PASS: 6691fc7e69b32d0879c93714a75e5e9c
    わが町のTSUTAYAでは、『七人の侍』はいつも貸し出し中で、なかなか観れません。こまめに店を覗いてゆきたいと思います。

    コメント by チャーリー432 — 2007年10月15日 12:05

  5. 【二人の幸せ】とは、どんな愛?

    不思議な? でも多分殆どの人が経験の無い世界?そんな世界からのメッセージです!

    コメント by 【二人の幸せ!】って・・・ — 2007年12月2日 22:10

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