佐藤可士和 ~ 佐藤可士和の超整理術

 SMAPのCD発売キャンペーンやNTTドコモの FOMA N703iD、キリンの「極生」、ホンダのステップワゴンの広告、ユニクロのロゴなど、幅広い分野で活躍される佐藤可士和さんの整理本です。  これらのデザインが、どのような思考回路を通って誕生したのか、「整理」という視点から具体的に書かれているので、面白かったです。
 アートディレクター・佐藤可士和さんは、アーティストとして独創的なアイディアで、数々のデザインを生み出しているのかと思いきや、さにあらず、むしろ自身を“ドクター”と形容しています。
 たとえるならまさに、僕がドクターでクライアントが患者。漠然と問題を抱えつつも、どうしたらいいのかわからなくて訪れるクライアントを問診して、症状の原因と回復に向けての方向性を探り出す。問題点を明確にするのと同時に、磨き上げるべきポテンシャルをすくい上げるのです。(中略)つまり、自分の作品を作るのではなく、相手の問題を解決する仕事なのです。解決策をかたちにする際にはじめて、デザインというクリエイティブの力を使うわけです。
 このように、僕の考えるアートディレクションは、自己表現が原動力ではありません。
(中略)
 問題解決のための手がかりは必ず、対象のなかにあります。優れた視点で対象を整理すれば、解決に向けての方向が明確になる。答えは、目の前にあるのです。
 なるほど、そう言われると、アートディレクターと整理術の関係が見えてきます。
 音楽のアルバムにも、プログレにはプログレ「らしい」ジャケット、演歌には演歌「らしい」ジャケット、パンクにはパンク、メタルにはメタル、クラシックにはクラシック「らしい」ジャケットがあります。いわゆる「ジャケ買い」をしたくなるのは、そのデザインに、中身の音を想像させる、ワクワクするような力があるからです。だから、そのアーティストの曲の特徴が良く分かっていなければ、どんなに技術のあるイラストレーターといえども、ミュージシャンを満足させることが出来ないでしょう。
 整理とは、物事の本質を見抜くための手段と言ます。では、如何に整理するか?『「捨てる!」技術』という本が売れたように、整理の基本は「捨てる」こととも言えると思いますが、本書では
1.状況把握 2.視点導入
を経て物事の本質を見抜き、
3.課題設定
して解決に導く整理術が紹介されています。ユニークなのは、
・空間の整理……整理するには、プライオリティをつけることが大切 ・情報の整理……プライオリティをつけるためには、視点の導入が不可欠 ・思考の整理……視点を導入するためには、まず思考の情報化を
と、「空間」「情報」「思考」の3つのレヴェルを設定している点です。それぞれのポイントを、

空間 ・定期的にアップデートする→モノを増やさないため ・モノの位置を決め、使用後はすぐに戻す→作業環境をすっきりさせるため ・フレームを決めてフォーマットを統一する→わかりやすく分類するため
情報 ・視点を引いて客観視してみる ・自分の思い込みをまず捨てる ・視点を転換し、多面的に見てみる
思考 ・自分や相手の考えを言語化してみる ・仮説を立てて、恐れず相手にぶつけてみる ・他人事を自分事にして考える
と挙げています。
 ここで大切なことは、「整理のための整理」であってはならないということです。“捨てる”ことが目的なのではなく、本当に大事なものを決めるための整理なのだと本書では訴えられています。整理は手段、目的はあくまで問題解決、つまり良い仕事にあるのです。
 これは、デザインの世界だけでなく、何事にも通じることだと思います。料理、音楽、文学、学問、スポーツ、人間関係……もっと言うなら、生きることそのものにおいて、最も大切なことは何か、物事の本質は何かを見極めることが、良い仕事(生き方)につながるのだと知らされます。
 そのための“整理術”、自分なりに工夫してみたいと思います。
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