梅田望夫 / ウェブ時代5つの定理 この言葉が未来を切り開く!

closeこの記事は 3 年 10 ヶ月 6 日 前に投稿されたものです。間違いに気づいたらその都度修正していますが、今読んだらおかしな点もあるかもしれません。ご了承ください。
 非常に感動しました。梅田望夫さんの本は、『ウェブ進化論』『ウェブ時代をゆく』も読んだことがありますが、いずれも前向きで積極的な内容で、読後感が非常に気持ち良いです。
 本書を読み終えると、2倍3倍の成長ではなく、100倍、1000倍の進化を目指したくなるような、向上心、やる気に満ちあふれる感覚になります。
「無難で、間違いのない生き方」も素晴らしいですが、それよりも、「いまだかつて誰もなし得なかったことを果敢に取り組む」姿勢というのが大好きです。失敗し、つまづき、叩かれても、何度もはい上がって挑戦する人には魅力を感じます。
 そんな、守りの生活よりも、多少リスキーでも攻めの人生を送りたい、と思っている人にはおすすめの一冊と言えると思います。
 本書で幾度となく出てくるのが「アントレプレナーシップ(entrepreneurship)」という単語ですが、本文では、日本語にはこの語の持つ意味合いをぴったりと言い当てた訳語がありません。「起業家精神」あるいは「企業家精神」と訳されて使い分けられていますが、アントレプレナーシップは、なにも起業家や会社経営だけに関わるメンタリティとは限りません。  新しい物事に対して創造意欲に燃え、リスクを引き受けて果敢に挑む姿勢、不確実な未来を楽しむ精神の持ちようなどを言い表すもので、「進取の気性に富む」というと一番ニュアンスが近いかもしれませんと説明されています。
 DREAM THEATER「Images and Words」を聴きながら読んだのですが、書かれている内容と、音楽から受ける印象が非常に合致して、興奮してしまいました。低迷していたプログレッシヴ・ロックを、へヴィ・メタルというジャンルの中で復興し、他の追随を許さないドリームシアターサウンドを構築、アルバムを出す毎にファンを驚かせ(戸惑わせ)る彼らもまた、アントレプレナーシップにあふれていると思います。
 それぞれの分野で第一人者として活躍している人に共通するのは、仕事に没頭し、他人を尊重し、好奇心旺盛で柔軟な頭をもっていることだと感じます。損得感情や利害打算などではなく、本気で良いものを創りだそう、とお互いが刺激し合い、向上心に燃えている人ではないでしょうか。そういう人は、一緒にいても気持ち良く、人間として魅力的だと思います。
 本書は、グーグル創業者ラリー・ページとサーゲィ・ブリンや、アップル創業者スティーブ・ジョブズなど、シリコンバレーにおけるIT関連の人々の名言集といった形を取られています。心に残る言葉がたくさんあったので、そのいくつかを書きとめてみましたが、いつものように長くなってしまいました。
 シリコンバレーという土地に生きていると、才能ということについて考えさせられることが多くなります。「こいつにはかなわないな」と思うような連中があらゆる分野にいますから、こうこれは仕方がないことだと多くの人が悟り、個人差ゆえの嫉妬とか羨望といった感情を超えて、すぐれた才能の持ち主と協力して、一人ではできない「より大きなこと」を目指そうという気持ちに変わっていきます。(p.60)
 アントレプレナーシップを支える「常軌を逸した熱」は、「やりたいことをやる」という気持ちと「社会を良くしたい」という思いの組み合わせによって持続します。お金が最優先事項では、長期にわたってそういう熱が持続しません。むしろ成功すれば信じられないほどの富を手にできるのだけれど、あくまでそれは副次的なもの。論理性と経済性が融合したシリコンバレーのそんな独特な論理が、仕事の面白さを倍増させ、「働く意欲」の強い源になっているのです。(p.65)
 自分にはない異質の才能を持った相手を認め、高く評価してはじめて、互いにまったく違う仕事を違う論理で進めていても、一緒に全力疾走することができます。お互いに尊敬し合える関係がベースにあってはじめて、共通のゴール意識を持ってチームとして突き進むことができるわけです。(p.83)
 好きな人、価値観を共有していると感じられる人と意気投合して話をしていると、言葉でくどくど背景説明をする必要がありません。相手がひと言発するだけで、何を言わんとしているのかすぐ想像がつく。高速でやりとりができるため、他の人には何の話をしているのかわからないときがあるほどです。その会話の楽しさといったらありません。(p.88)
Aクラスの人は、Aクラスの人と一緒に仕事をしたがる。 Bクラスの人は、Cクラスの人を採用したがる。──シリコンバレーの格言
A-level people want to work with A-level people. B-level people tend to hire C-level people. — Silicon Valley proverb

(中略)
 Aクラスの人は、仕事を楽しくするために、自分を向上させていくために、自分より優れた人と一緒に働きたいと考えますが、Bクラスの人は、実力に不安があるから自分よりも劣った人を採用したがる、という意味です。
(中略)
優秀な連中は優秀な連中と一緒に働くこと以外に耐えられないのだ、というのが彼らの経験から来る言葉でした。
(中略)
 まさにいまのグーグルがこんな雰囲気です。時代の最先端をいく旬な企業には、トリプルAクラスの人たちが集まってきます。80年代のアップルもそうでした。Aクラスの人たちが集まって互いの力を認め合い、そういう人がまたAクラスの人材を引っ張ってきて、チームで切磋琢磨していくことで、その才能がますます磨かれていくのです。(p.93~96)
 一流の技術者はみな、とにかく好奇心旺盛です。自分の専門であろうがなかろうが、何でも興味を持ち、専門外の技術の話なんかが聞こえてきても、「なに、なに?」と言って興味を示します。(p.124)
モノづくりが好きな技術者の仲間たちと話をするのが何より好きだと彼は言いますが、そういう人たちが何人か集まって話すときも、全員お互いの顔は見ずに、何か手元にあるモノを見ながら話すのだそうです。 「このラインはいいな」とか「ここのちょっとしたへこみは、どんな意図でやっているんだろうね」とか、テーブルの真ん中に置かれたモノを見て、大いに盛り上がる。そして製品を見るだけで「なるほどね。この素材を使えば安くなるものなあ」「この部分でずいぶん苦労したろうなあ」というのが次々にわかって、話は尽きないのだという。だからモノを介せば、違う技術畑の人たちとも濃密に意見を交わし合えるのだそうです。 (中略)  モノを見て、それをつくった人の心がわかる──これぞ技術者の視点です。(p.127)
ハッカーと画家に共通することは、 どちらもモノをつくる人間だということだ。 作曲家や建築家や作家と同じように、ハッカーも画家も、 良いものをつくろうとしている──ポール・グラハム
What hackers and painters have in common is that they’re both makers. Along with composers, architects, and writers, what hackers and painters are trying to do is make good things. — Paul Graham

 ハッカーという言葉は「コンピューターに侵入する連中」ではなく「優れたプログラマ」という意味ですが、自らもハッカーであるポール・グラハムは、ハッカーの世界観についてエッセイを書き、ネット上で発表し続けてきました。世界中のハッカーたちが、このエッセイ群は自分たちが言いたかったことを代弁していると深く共感しました。
(中略)
大学や研究所はハッカーに科学者たることを強要するが、 企業はハッカーにエンジニアたれと強要する──ポール・グラハム
Universities and research labs force hackers to be scientists, and companies force them to be engineers.–Paul Graham

 そしてもう一つ、芸術家である画家とハッカーが同じだと主張する論拠に、自発性、自分がつくりたいと思うものをつくる、ということがあります。人から言われたとおりにモノをつくる「雇われエンジニア」ではないという自負です。
(中略)
偉大なプログラマは金に関心がない、と言われることがある。 これは必ずしも正しくない。 ハッカーたちが本当に大切にしているのは、面白い仕事をすることだ。 でも、十分な金を稼げば、それからはやりたい仕事ができる。 そしてこの理由から、ハッカーは莫大な金を稼ぐことに惹かれる。──ポール・グラハム
Great programmers are sometimes said to be indefferent to money. This isn’t quite true. It is true that all they really care about is doing interesting work. But if you make enough money, you get to work on whatever you want, and for that reason hackers are attracted by the idea of making really large amounts of money. — Paul Graham

 これがハッカーとベンチャーとをつなぐ論理です。 「好きなことをする」「やりたいことをして暮らす」自由を得るために、人生のある時期にベンチャー創造に関わって成功し、「経済的自立」を勝ち取れば、あとは一生、自分がつくりたいモノをつくりながら自由に生きていく権利を得る、という考え方です。
(中略)
 ハッカー集団においては、誰かが書いたコードの良し悪し、プログラミング能力のレベルは完全に見抜かれ、理解されてしまいます。コードの素晴らしさのみで、互いの序列は決まる。自分を理解してくれる周囲のハッカーによって評価され賞賛されることを何よりの喜びとします。  金銭的動機の無いオープンソースの開発者たちはもちろん、シリコンバレーのハッカーたちのコミュニティでも、内発的な動機付けをとても重視します。優れたものが生まれるときのモチベーションは、報酬ではなく、自分がやりたいと思うことを思い切りやり、その意味を理解する仲間がきちんと賞賛してくれることにあるという考え方です。  そしてこういう世界は、とにかく没頭している度合いの深い人が勝つ。  またハッカーたちは、多かれ少なかれ皆、カウンターカルチャー的な気分を内包しています。テクノロジーでできることははっきりと彼らの目には見える。でも現実はそうなっていないことが多い。当然、社会への潜在的な不満足感が生まれますから、自分たちの手を動かして新しいものをつくり出そうとするのです。(p.129~134)
 一流の人たちに共通するのは、「技術者の眼」で世の中の変化を見通す力、妥協を排する強さ、細部への徹底的なこだわり、そしてそれを実現するための勤勉と没頭の継続です。私たちはここからとても多くのことを学ぶことができると思います。(p.172)
グーグルの第一論理──「邪悪であってはいけない」
「邪悪であってはいけない」(中略) もちろん、人によって邪悪さについての意見は 少し異なるかもしれないが、 大部分の人はそれに関する的確な考え方を持っているものだ。 もし100人の平均的な人たちに尋ねれば、どちらが正しいか、 ほとんどみんな一致すると思うよ。──エリック・シュミット
“Don’t be evil.” (・・・) Of course, people may slightly disagree over evil, but most people have a pretty accurate model. If you ask the average group of a hundred people, pretty much everybody would agree about which side of the fence things belong on. — Eric Schmidt

(中略)
 私の昔からの友人が、最近グーグルに転職したのですが、 「仰天したよ。この会社は本当に性善説で動いている」  とびっくりしていました。おおよそ普通の会社では考えにくい判断の仕方で、意思決定が進んでいく。これまでの彼の経験から、「そんなことでは会社は回らないぞ」という言葉がついのどまで出かかる、それを日々必死で堪えていると苦笑いしていました。  こういう話をすると、そんなことがあるわけないだろう、という反応に日本ではよく出合います。しかし私は「邪悪であってはいけない」というグーグルのモットーは、「情報を押さえる」という社会的責任の大きい仕事をしていく者が、自覚的に自らを律している言葉なのだと思います。
(中略)
 しかし、たとえグーグルの社員たちが本当に「邪悪であってはいけない」と考えながら真剣に仕事をしていたとしても、そもそも「世界中の情報を整理し尽くしてあまねく誰にも行き渡らせる」というミッションは、私たちの社会の現実との間で大きな齟齬(そご)をきたすものです。各国の政府の機密保持や統治システムの思想との間でも相容れないし、個人のプライバシー保護の問題とどう折り合いをつけるかも難しい。  そういう矛盾はすべてわかったうえで、それでも「世界中の情報を整理し尽くしてあまねく行き渡らせる」ことは良いことなのだという信念のもと、社会の現実との間に危ういながらも何とか均衡を保つためには、少なくとも運営側の意識として「邪悪であってはいけない」という論理がなければ絶対にうまくいかない。それだけは確かなことでしょう。(p.176~179)
「すごい(Great)」だけじゃ不十分だ。 いつも期待されている以上の結果を出せ。 グーグルは「(誰かと比較して)ベストである」ことを 到達点と甘んじない。それはあくまでも出発点だ。──グーグル10ヵ条の10
Great just ins’t good enough. Always deliver more than expected. Google does not accept being the best as an endpoint, but a starting point. — Ten things Google has found to be true.

 この言葉も、完璧を目指すグーグルの姿勢をよく表している言葉です。競合という概念がグーグルには希薄です。「(誰かと比較して)ベストである」ことには価値を見出さず、それは出発点に過ぎないと考えるからです。  世界中の情報を整理し尽くしたうえで、利用者の意図を完璧に汲み取って、ぴったりと合った情報を、無限と言うべきネット上の全体から瞬時に探し出して返す。グーグルの定義する完璧な検索エンジンとは人工知能そのものです。そういう遥か高いところに目標を置き、難問の解決に取り組むのがグーグルの姿勢です。(p.194)
 会社が大きくなっても、膨大な量の情報を共有し、チーム単位で皆ものすごいスピードで走りながら新しい試みを続けていれば、それを束ねる経営トップの立場からミクロに見ると、会社は混沌したカオスのようでしょう。しかしそれを整理しすぎて、全体を分かりやすくしてしまっては、肝心のイノベーションは生まれません。  最近の日本企業では、個人情報漏洩を防ごうとして、またコンプライアンス経営への傾斜が強くなり、何かをやろうとすれば常にそれをやってよいかを管理部門にお伺いを立てるといった方向にいく例や、さまざまなことを厳しく管理しようとする部門が力を持ちすぎる例がよく見られます。そういう会社では混沌はなくなるかもしれませんが、活気が失われ、イノベーションが生まれなくなります。  小さい組織のいいところは、失うものがまだ大きくないから、失敗もしやすいことです。  勝手にみんながいろいろやって仮に失敗しても、もともと小さくて始まったばかりの会社ですから、損失などたかが知れています。そういう環境での自由な試行錯誤からイノベーションが生まれます。
ミスを犯してくれて大変嬉しい。 「あまりに慎重でほとんど何もしない」のではなく、 「迅速に動き、たくさんのことをする」会社を私は経営したい。 もしこうしたミスをまったく犯さないとすれば、 私たちは十分なリスクを取っていないことになる。──ラリー・ページ
I’m so glad you made this mistake, because I want to run a company where we are moving too quickly and doing too much, not being too cautious and doing too little. If we don’t have any of these mistakes, we’re just not taking enough risk. — Larry Page

(中略)
 大企業になれば、失うものも多くなります。試行錯誤もいいけれど、失敗したときの代償も大きくなるわけです。それがきっかけでみな、大きな会社になると「普通の会社」になっていきます。こうしたストーリーをあえて雑誌に公開していくことで、グーグルは、会社が大きくなっても「普通の会社」にならず、社員がどんどん大胆な挑戦をし続けられるようトップが腐心しているのだと思います。(p.213)
人々の善性を信じよ
良い人々がより良く振る舞えるようにする環境づくりを、 本気で考えなければならないと思う。 同時にネガティブな人々のもたらす影響を弱めて 小さくすることも重要だ──ピエール・オミディア
I really think it’s important to just focus on what the environment needs to look like to encourage the good people to behave even better and to mitigate and minimize the effects of the negative people. — Pierre Omidy

(中略)
 ネガティブな側面を増幅したり過敏に反応したりするのではなく、それとは全く逆の発想で、ポジティブな人の連鎖を増幅させようとする。  シリコンバレー発のネット文化の根底にはこういう成熟した考え方が流れていて、それがネット上におけるある種の「大人の流儀」をつくり出しています。システムのつくり手が不特定多数への信頼を強い信念として持っていて、かつメッセージとして強く打ち出しているところに意味があります。(p.231~232)
真に偉大な企業は、欲によってではなく、情熱によってつくられる。 現在の市場環境は、強い情熱を持ったアントレプナーを 見つけるための素晴らしいフィルターである。──ウィリアム・ガーレイ
Truly great companies aren’t built by the greedy, but by the passionate. (・・・) Today’s market is a great filter for finding passion-driven entrepreneurs. — William Gurley
(p.214)
若い人の流儀を尊重する
エリック(・シュミット)は新しいゲームをプレーするために、 自分の振る舞いを完全に変えた。エリックほどの成功者であれば、 自分は万事心得ていると考えても許されるだろう。グーグルにやって来て、 おい青二才、俺がやり方を教えてやるよ、と彼が言ったって許されたはずだ。 そうではなく、彼は話を聞いた。そして観察した。 何が起きているのかを見極めた。 自分がこれまでうまくやってきたことのうち、 どの部分がグーグルをより良くするか、見極めたのだ。 グーグルのオリジナルチームがやってきたどの部分が 彼自身(エリック)をよりよくするか、見極めたのだ。 これがマネジメントの極意だ。──ロジャー・マクナミー
Eric has totally modified his behavior in order to play a new game. When you have been as successful as Eric has been, you’re entitled to think that you know a thing or two. He could have been forgiven if he had shown up at Google and said, Hey, you young whippersnappers, let me show you how it’s done. Instead, he listened. He watched. He figured out what the business was. He figured out which parts of what he did well would make it better and which parts of what the original team did were going to make him better. That’s the essence of management. — Roger McNamee

(中略)
 シュミットは、過去の成功体験にしがみつくのではなく、自分を変えた。若い人たちがやっていることを、聞いて、見て、そこで行われていることを理解して、その一部になっていこうとします。年長で経験も豊富だからといって、若い人たちに自分のやり方を押し付けることはしない。自分の経験を腑分けして、その中から本当に役に立つものだけを選び出してグーグルに注入しようとした、とロジャーは分析します。  これが、シュミットの大人の流儀でした。互いへの尊重を基盤においた、優れたチームマネジメント法といえます。
(中略)
 新しい世代の新しい流儀を否定せずに応援すること、それが大人たちに求められる真のマネジメント力です。(p.248~251)
まだ何者でもない若者を支援する
私はただ、20代そこそこで会社を始める才能のある奴らの 熱狂的ファンなんだ。──マイケル・モリッツ
I am just an incredibly enthusiastic fan of very talented 20-somethings starting companies. — Michael Moritz

(中略)
頭が良くって、でも経験のないアンダードッグ(負け犬)が大好きだ。──マイケル・モリッツ
We have a fondness for smart but perhaps inexperienced underdogs.

 アンダードッグは負け犬という意味ですが、ここでは、未経験なまだ何者でもない若者というイメージです。
(中略)
 どんな人も最初は何者でもなかったわけです。当たり前ですね。グーグルの創業者だって普通の大学院生だったわけだし、スティーブ・ジョブズがアップルを始めるときに何の実績があったでしょうか。そういう人材に早い時期に目をつけて投資して当たれば莫大なリターンが返ってくる世界です。  世界を変える新しいものをつくり出す人は、何者でもないところからいきなり出てくる。それをシリコンバレーの大人たちはみな、骨身に沁みてわかっているのです。
(中略)
 玉石混淆のなかから、世界を変えるものが登場するのは、ごくまれです。そこへの投資は、単純に金儲けしたいという動機だけではやや無理がある。やはり、社会全体で若者たちを信じ、その才能や力に賭けたい、心底応援するプロセスを楽しみたいという空気がなければ、なかなかできることではありません。(p.252~255)
愛するものを全うする
 最後に、2005年夏、スタンフォード大学卒業生向け講演でのスティーブ・ジョブズの名スピーチを取り上げたいと思います。
君たちの時間は限られている。 その時間を、他の誰かの人生を生きることで無駄遣いしてはいけない。 ドグマにとらわれてはいけない。 それでは他人の思考の結果とともに生きることになる。 他人の意見の雑音で、自分の内なる声を掻き消してはいけない。 最も重要なことは、君たちの心や直感に従う勇気を持つことだ。 心や直感は、君たちが本当になりたいものが何かを、 もうとうの昔に知っているものだ。 だからそれ以外のことは全て二の次でいい。──スティーブ・ジョブズ
Your time is limited, so don’t waste living someone else’s life. Don’t be trapped by dogma — which is living with the results of other people’s thinking. Don’t let the noise of others’ opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary. — Steve Jobs

(中略)
偉大な仕事をする唯一の方法は、あなたがすることを愛することだ。 まだ見つかっていないなら探し続けろ。落ち着いちゃいけない。 まさに恋愛と同じで、見つかればすぐにそれとわかる。 そして素晴らしい人間関係と同じで、年を重ねるごとにもっと良くなる。 だから見つかるまで探し続けろ。探すのをやめてはいけない。──スティーヴ・ジョブズ
The only way to do great work is to love what you do. If you haven’t found it yet, keep looking. Don’t settle. As with all matters of the heart, you’ll know when you find it. And, like any great relationship, it just gets better and better as the years roll on. So keep looking until you find it. Don’t settle. — Steve Jobs

(中略)
 他の誰かの人生を生きてはいけない。好きなことを探し続け、落ち着いてはいけない。探すのをやめてはいけない。内なる声に従い、自分の愛する仕事を全うする、そうすることで真に価値あるものが達成される。それ以外のことはすべて二の次でいい。本当にその通りだと思います。
自分がやらない限り世に起こさないことを私はやる。──ビル・ジョイ I try to work on things that won’t happen unless I do them. — Bill Joy
(中略)
 人と同じことをやるのはお手本があって安心かもしれないけれど、そればかりやっていると、いつでも代替がきくコモディティになりやすい。一方、個性や志向性を追求すれば、万人には理解されなくて不安かもしれないけれど、理解者を得れば理解者との間に強い絆をつくることができる。それが脱コモディティ化の要諦です。たとえどんなに小さな達成でも、他者が絶対にやらないような組み合わせを工夫することは、コモディティ化を避けるきわめて重要な考え方です。そしてそれは、「時代の大きな変わり目」をサバイバルするための要諦そのものです。
当然のことながら、仕事やビジネスには、「攻め」の部分と「守り」の部分の両方があります。これまでにできあがっている約束事に従い「守りの仕事」を粛々とこなしていくことはとても大切なことです。しかし「守りの仕事」のメンタリティだけでは、イノベーションによって未来を創造することはできない。  個や組織が「攻め」の姿勢を明確にし、「守りの仕事」の一つひとつにも独創的な「攻め」の部分を盛り込んでいくことが、これからはより求められていくでしょう。それが高コスト構造の先進国たる日本の宿命だからです。
(中略)
 人や組織、地域や国には、それぞれ長所があり、短所があります。シリコンバレーもその例外ではありません。しかしシリコンバレーという地の、こと未来志向の「攻めの仕事」となったときの創造性の爆発的発露、無から有を生み出す想像力やフロンティア開拓の冒険心は、本当に目を瞠(みは)るものがある。その点に関しては、世界中のどの地にも存在しない不思議な力がここにはあります。
(中略)
 私自身もこれからは本書を座右に置き、歳を重ねるごとに押し寄せてくる「守りに入る誘惑」に抗していきたいと思っています。

Steve Jobs’ 2005 Stanford Commencement Address
日本語字幕付きはこちら ↓ スティーブ・ジョブス スタンフォード大学卒業式辞 日本語字幕版

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