★゜・。。・゜゜・。。・゜☆ 2008年07月18日 ☆゜・。。・゜゜・。。・゜★
地上げ屋の道徳教育
小学校の時、道徳の授業というのがあって、TVを見せてもらえるので好きでした。
見ていたのはこれ↓と書くと、年齢が推測されてしまいますが、、、(^^;
なども見てました。
は見てなかったと思いますが。
当時は道徳の授業って、「息抜き」みたいな感覚でしたが、今思えば非常に大切なことが教えられていたのだな、と思わずにおれません。
以下、日経ビジネス オンラインで見つけた「地上げ屋の道徳教育」という記事ですが、結構良い内容だと思うので紹介いたします。
ただし、一部穴埋め問題にしてみました。 の中は、マウスでドラッグすれば見れます。
見にくければ ↓ 【プロローグ】「いじめに負けない子供を育てる」 【第1話】「心を強くするために、絶対にやったらアカンこと」 【第2話】サイフに常時100万円、それで己に克てたのか? をどうぞ。
TO BE CONTINUED…
Links: 口笛吹いて 空き地へ行った – Welcome to Tuna Fish Music 純喫茶さくらば : ♪ 口笛ふいて~ 空き地へ行った~ 右脳ダイアリー: ♪口笛吹いて空き地へ行った・・・ 口笛吹いてって憶えてる? ~NHK教育『みんななかよし』~ – ~にゃっこのにっき~ – 楽天ブログ(Blog)
70′s 道徳 みんななかよし
【歌詞】
口笛吹いて、空き地へ行った
知らない子がやってきて
遊ばないかと笑って言った
ひとりぼっちはつまらない誰とでも仲間になって仲良しになろう
口笛吹いて、空き地へ行った
知らない子はもういない
みんな仲間だ仲良しなんだ
他にも、
口笛吹いて、空き地へ行った
知らない子がやってきて
遊ばないかと笑って言った
ひとりぼっちはつまらない誰とでも仲間になって仲良しになろう
口笛吹いて、空き地へ行った
知らない子はもういない
みんな仲間だ仲良しなんだ
70′s 道徳 明るいなかま
80′s 道徳 さわやか三組
80′s 道徳 さわやか三組
なども見てました。
90′s 道徳 あしたへジャンプ
は見てなかったと思いますが。
当時は道徳の授業って、「息抜き」みたいな感覚でしたが、今思えば非常に大切なことが教えられていたのだな、と思わずにおれません。
以下、日経ビジネス オンラインで見つけた「地上げ屋の道徳教育」という記事ですが、結構良い内容だと思うので紹介いたします。
ただし、一部穴埋め問題にしてみました。 の中は、マウスでドラッグすれば見れます。
見にくければ ↓ 【プロローグ】「いじめに負けない子供を育てる」 【第1話】「心を強くするために、絶対にやったらアカンこと」 【第2話】サイフに常時100万円、それで己に克てたのか? をどうぞ。
【プロローグ】「いじめに負けない子供を育てる」
いじめ自殺が相次ぐ昨今。いじめに回らない、いじめに負けない強い子供にしたい。そう考えた地上げ屋が、2年にわたって子供に続けている道徳教育の記録である。 その中身は、心の強さや物事の道理、社会との関わりなど。心の教育にとどまらず、家庭や学校が教えてくれない人間社会を生き抜くための処世術という側面も持つ。 この地上げ屋自身、カネと欲望が渦巻く不動産業界、特に立ち退き交渉という札束が飛び交う世界で人の本質を見続けてきた。そんな悪漢だからこそ話せる道徳論。
-------- ◆「(A)価値観とは」 --------
暖かい日差しに覆われた5月の土曜日。ガラス窓から差し込む陽光を背に、2人の子供がノートに顔を近づけていた。小学校6年生の姉サクラと4年生のリュウジ。その横には、髪を短く刈り揃えた色黒の男がいた。2人に何やら語りかけ、メモを取らせている。2年前から続く、土曜日のいつもの光景である。
********************
父親:よっしゃ、サクラ、リュウジ、勉強会を始めるで。今日のテーマは「(A)価値観」。「価」「値」「観」。漢字で書いたらこうや。ほんなら聞くけど、(A)価値観って何?
サクラ:聞いたことある。
父:例えば、リュウジはスパイダーマンのオモチャを買うやん。リュウジは5000円を出してもスパイダーマンのゲームが欲しい。でも、サクラはあんなもん買おうとは思わんやろ。
サクラ:うん。
父:じゃあ、サクラが欲しい物は何やの。
サクラ:CD。
父:リュウジはそんなもん、興味ないやろ。
リュウジ:ない。
父:リュウジにとっては大事な物であっても、サクラには何の興味もない。人それぞれ、値打ちを感じる物が違う。これが(A)価値観。(A)価値観の違いというヤツや。そしたら、自分がエエと思うものを人に押しつけるのはどうや。リュウジが、「スパイダーマンがエエからお前も買え」と押しつけたらどうや。
サクラ:嫌や。
父:そうやろ。人それぞれ(A)価値観は違う。自分の(A)価値観をあまり人に押しつけない方がエエ。じゃあ、もう1つ聞くけど、「オレは人をどつくのが趣味や。人をどつくことに価値あると思うとんねん。オレの(A)価値観やから放っておおいて」。これ、リュウジがスパイダーマンを好きなのと同じ(A)価値観かな。
サクラ:違う。
父:何が違うの?
サクラ:スパイダーマンやCDは誰にも害を与えないけど、殴るのは人を傷つける。
父:そう、大正解! (A)価値観はお互いに尊重しなければダメ。でも、その(A)価値観は人に(B)迷惑をかけない(C)常識的なことでないとアカン。なら、ここに出てきた「(C)常識的」ってどういうこと。どういうことが(C)常識的なん?
リュウジ:当たり前のこと。
父:「当たり前」ってどういうこと? お父ちゃんは毎晩、酒を飲む。これはオレにしたら当たり前のことや。でも、お前らは酒を飲むお父ちゃんは嫌いやろ。じゃあ、何でお父ちゃんが酒を飲むとアカンと思うの?
リュウジ:酔っぱらう。
父:酔っぱらって嫌なことを言ったり、すぐ怒ったりして、お前らに(B)迷惑をかけているからやろ。もしお父ちゃんがいくら酒を飲んでも酔わんと、何もしなかったら嫌なことと違う。(C)常識的というのは、「人に(B)迷惑をかけない」ということと違うか。
サクラ&リュウジ:うなずく。
父:よっしゃ、じゃあ、ノートに書けよ。
「人それぞれ、自分の(A)価値観を持っています。自分がよいと思うことでも、そう思わない人もいます」 「人それぞれ、(A)価値観が違うので、あまり自分の(A)価値観を押しつけない方がいいです」 「(A)価値観はお互いにそれぞれ尊重しなければいけませんが、その(A)価値観は人に(B)迷惑をかけない(C)常識的なことでなければいけません」 「(C)常識的なこととは人に(B)迷惑をかけないことです。自分は人に(B)迷惑をかけないように、いつも正しい考えで、正しい行動をするようにします」
----------------- ◆プロの地上げ屋が始めた勉強会とは -----------------
この男の名は小川宇満雄(ウミオ)、49歳。職業は地上げ屋。立ち退き交渉を生業にしている。大阪市内の高校卒業後、うどん屋の店員やミナミの黒服、不動産仲介業、わずか2カ月だが暴力団組長の秘書など、様々な職業を転々としてきた。そして、地上げの世界に足を踏み入れると、凄腕の地上げ屋として君臨。百戦百勝の地上げ屋としてその名前を轟かせた。
小川の手法は言葉一つ。“筋モノ”を使った嫌がらせを一切せず、話術と弁舌のみで交渉をまとめていく。「組織」との関係は一切、持たない。表情は柔和だが、時折見せる視線には刃が宿る。幾多の修羅場をくぐり抜けてきたからだろう。
顧客の多くは財閥系不動産などの一部上場企業である。今年3月、東証2部上場のスルガコーポレーションが暴力団との関わりがある地上げ屋に立ち退きを依頼。多額の報酬を支払っていたことが明らかになった(スルガは6月に民事再生法の適用を申請)。この事件の影響で地上げ屋への委託が難しくなっているが、顧客の多くは小川に信頼を寄せている。
そんな地上げ屋の男がなぜ、子供相手に勉強会を始めたのか。
********************
2年ほど前、小学生の飛び降り自殺をテレビのワイドショーで見た。朝、親に「行ってきます」と言うて、そのまま飛び降りた。その子は前の日、何を考えていたんやろう。どういう気持ちでお母さんに「行ってきます」と言うたんやろう。なぜ親は気づかなんだろう。そう考えると、涙が止まらなかった。心を打たれた。
その当時、上の子は小4、下の子は小2やった。いじめる側に回ってはアカン。仮にいじめられても、死ぬという思考回路になってはアカン。いじめを跳ね返す心の強さを持たなアカン。親も子供のシグナルを見逃してはアカン。そう思うた
追々話していくけど、訳あって、子供と離ればなれに暮らしていた。オレは子煩悩やし、離ればなれでどんだけ寂しかったか。いずれ一緒に住もうと頑張って仕事して、家を建てて、週末だけでも一緒に暮らせるようになった。その矢先にこのニュースや。だからこそ、余計に心に響いた。
いじめない子供のメンタリティを作る。いじめられても強く生きる――。それが、親としてできる最大限のことや。そう思うて、月1回のミーティングを始めた。月1回、親子でじっくり話し合う機会があれば、子供のシグナルも分かるやろうしな。
実は、この勉強会にはもう1つの狙いがあんねん。地上げを通して、オレは人の心の襞を嫌というほど見てきた。物事の道理、自分や他者との関係、社会との関わり――。オレの実体験を、小川家の処世術として、子供に残したい。そう思ったんや。
オレの人生の命題は「幸せに生きる」。はっきり言うけど、カネがあるからと言って、幸せになるとは限らへん。金持ちになりたくてこの仕事を始めた。そりゃあ、悪さもたくさんしたと思うよ。その結果、普通の人よりは金を儲けたんと違う? でも、カネは人を幸せにしない。今はそう言いきれる。 煩悩の海を20年間、泳ぎ続けた
不動産は価値の源泉である。それゆえに、人の欲が交錯する。小川はそんな欲望が渦巻く不動産業界、その中でも立ち退き交渉という鉄火場でしのぎを削ってきた。地上げ屋は地主の依頼を受け、借家人の立ち退き交渉に当たる。法律で借り手の権利が守られているため、地上げ屋は立ち退き料を払うことで解決していく。頬を札束で叩いて、立ち退いてもらうのだ。
札束が飛び交う立ち退き交渉。ここでは、人間のエゴと欲が剥き出しに、そして人間の素の部分が露わになる。その煩悩の海を小川は20年、泳ぎ続けてきた。勉強会で子供に説く内容。それはすべて、小川のこれまでの体験で学んできたことで、生き死にの中で身につけてきたことである。地上げ屋は日陰の稼業。だが、人間と社会を裏から見続けた小川だからこそ、見える真実もある。
********************
世知辛い世の中。まともに生きていくのは大変なことや。なのに、親も学校も、子供に大切なことは何も教えへん。社会を生き抜く知恵や心の教育が今こそ、必要なのと違うか。「地上げ屋風情が何を」と思う人もおるかもしれんが、オレも子の親。幸せになってほしいという想いは誰にも負けへん。
じゃ、今からオレがやっている勉強会の一部を見せるわ。自分が今まで生きてきた中でつかんだコツや読書で理解した事柄を、小川流に解釈したこと。辞書には書いていないオレだけの言葉や。1回目は「心の強さ」について。興味のある人はつき合って。いろいろと差し支えるから、オレら家族は匿名にさせてもらうけど堪忍な。
TO BE CONTINUED…
いじめ自殺が相次ぐ昨今。いじめに回らない、いじめに負けない強い子供にしたい。そう考えた地上げ屋が、2年にわたって子供に続けている道徳教育の記録である。 その中身は、心の強さや物事の道理、社会との関わりなど。心の教育にとどまらず、家庭や学校が教えてくれない人間社会を生き抜くための処世術という側面も持つ。 この地上げ屋自身、カネと欲望が渦巻く不動産業界、特に立ち退き交渉という札束が飛び交う世界で人の本質を見続けてきた。そんな悪漢だからこそ話せる道徳論。
-------- ◆「(A)価値観とは」 --------
暖かい日差しに覆われた5月の土曜日。ガラス窓から差し込む陽光を背に、2人の子供がノートに顔を近づけていた。小学校6年生の姉サクラと4年生のリュウジ。その横には、髪を短く刈り揃えた色黒の男がいた。2人に何やら語りかけ、メモを取らせている。2年前から続く、土曜日のいつもの光景である。
********************
父親:よっしゃ、サクラ、リュウジ、勉強会を始めるで。今日のテーマは「(A)価値観」。「価」「値」「観」。漢字で書いたらこうや。ほんなら聞くけど、(A)価値観って何?
サクラ:聞いたことある。
父:例えば、リュウジはスパイダーマンのオモチャを買うやん。リュウジは5000円を出してもスパイダーマンのゲームが欲しい。でも、サクラはあんなもん買おうとは思わんやろ。
サクラ:うん。
父:じゃあ、サクラが欲しい物は何やの。
サクラ:CD。
父:リュウジはそんなもん、興味ないやろ。
リュウジ:ない。
父:リュウジにとっては大事な物であっても、サクラには何の興味もない。人それぞれ、値打ちを感じる物が違う。これが(A)価値観。(A)価値観の違いというヤツや。そしたら、自分がエエと思うものを人に押しつけるのはどうや。リュウジが、「スパイダーマンがエエからお前も買え」と押しつけたらどうや。
サクラ:嫌や。
父:そうやろ。人それぞれ(A)価値観は違う。自分の(A)価値観をあまり人に押しつけない方がエエ。じゃあ、もう1つ聞くけど、「オレは人をどつくのが趣味や。人をどつくことに価値あると思うとんねん。オレの(A)価値観やから放っておおいて」。これ、リュウジがスパイダーマンを好きなのと同じ(A)価値観かな。
サクラ:違う。
父:何が違うの?
サクラ:スパイダーマンやCDは誰にも害を与えないけど、殴るのは人を傷つける。
父:そう、大正解! (A)価値観はお互いに尊重しなければダメ。でも、その(A)価値観は人に(B)迷惑をかけない(C)常識的なことでないとアカン。なら、ここに出てきた「(C)常識的」ってどういうこと。どういうことが(C)常識的なん?
リュウジ:当たり前のこと。
父:「当たり前」ってどういうこと? お父ちゃんは毎晩、酒を飲む。これはオレにしたら当たり前のことや。でも、お前らは酒を飲むお父ちゃんは嫌いやろ。じゃあ、何でお父ちゃんが酒を飲むとアカンと思うの?
リュウジ:酔っぱらう。
父:酔っぱらって嫌なことを言ったり、すぐ怒ったりして、お前らに(B)迷惑をかけているからやろ。もしお父ちゃんがいくら酒を飲んでも酔わんと、何もしなかったら嫌なことと違う。(C)常識的というのは、「人に(B)迷惑をかけない」ということと違うか。
サクラ&リュウジ:うなずく。
父:よっしゃ、じゃあ、ノートに書けよ。
「人それぞれ、自分の(A)価値観を持っています。自分がよいと思うことでも、そう思わない人もいます」 「人それぞれ、(A)価値観が違うので、あまり自分の(A)価値観を押しつけない方がいいです」 「(A)価値観はお互いにそれぞれ尊重しなければいけませんが、その(A)価値観は人に(B)迷惑をかけない(C)常識的なことでなければいけません」 「(C)常識的なこととは人に(B)迷惑をかけないことです。自分は人に(B)迷惑をかけないように、いつも正しい考えで、正しい行動をするようにします」
----------------- ◆プロの地上げ屋が始めた勉強会とは -----------------
この男の名は小川宇満雄(ウミオ)、49歳。職業は地上げ屋。立ち退き交渉を生業にしている。大阪市内の高校卒業後、うどん屋の店員やミナミの黒服、不動産仲介業、わずか2カ月だが暴力団組長の秘書など、様々な職業を転々としてきた。そして、地上げの世界に足を踏み入れると、凄腕の地上げ屋として君臨。百戦百勝の地上げ屋としてその名前を轟かせた。
小川の手法は言葉一つ。“筋モノ”を使った嫌がらせを一切せず、話術と弁舌のみで交渉をまとめていく。「組織」との関係は一切、持たない。表情は柔和だが、時折見せる視線には刃が宿る。幾多の修羅場をくぐり抜けてきたからだろう。
顧客の多くは財閥系不動産などの一部上場企業である。今年3月、東証2部上場のスルガコーポレーションが暴力団との関わりがある地上げ屋に立ち退きを依頼。多額の報酬を支払っていたことが明らかになった(スルガは6月に民事再生法の適用を申請)。この事件の影響で地上げ屋への委託が難しくなっているが、顧客の多くは小川に信頼を寄せている。
そんな地上げ屋の男がなぜ、子供相手に勉強会を始めたのか。
********************
2年ほど前、小学生の飛び降り自殺をテレビのワイドショーで見た。朝、親に「行ってきます」と言うて、そのまま飛び降りた。その子は前の日、何を考えていたんやろう。どういう気持ちでお母さんに「行ってきます」と言うたんやろう。なぜ親は気づかなんだろう。そう考えると、涙が止まらなかった。心を打たれた。
その当時、上の子は小4、下の子は小2やった。いじめる側に回ってはアカン。仮にいじめられても、死ぬという思考回路になってはアカン。いじめを跳ね返す心の強さを持たなアカン。親も子供のシグナルを見逃してはアカン。そう思うた
追々話していくけど、訳あって、子供と離ればなれに暮らしていた。オレは子煩悩やし、離ればなれでどんだけ寂しかったか。いずれ一緒に住もうと頑張って仕事して、家を建てて、週末だけでも一緒に暮らせるようになった。その矢先にこのニュースや。だからこそ、余計に心に響いた。
いじめない子供のメンタリティを作る。いじめられても強く生きる――。それが、親としてできる最大限のことや。そう思うて、月1回のミーティングを始めた。月1回、親子でじっくり話し合う機会があれば、子供のシグナルも分かるやろうしな。
実は、この勉強会にはもう1つの狙いがあんねん。地上げを通して、オレは人の心の襞を嫌というほど見てきた。物事の道理、自分や他者との関係、社会との関わり――。オレの実体験を、小川家の処世術として、子供に残したい。そう思ったんや。
オレの人生の命題は「幸せに生きる」。はっきり言うけど、カネがあるからと言って、幸せになるとは限らへん。金持ちになりたくてこの仕事を始めた。そりゃあ、悪さもたくさんしたと思うよ。その結果、普通の人よりは金を儲けたんと違う? でも、カネは人を幸せにしない。今はそう言いきれる。 煩悩の海を20年間、泳ぎ続けた
不動産は価値の源泉である。それゆえに、人の欲が交錯する。小川はそんな欲望が渦巻く不動産業界、その中でも立ち退き交渉という鉄火場でしのぎを削ってきた。地上げ屋は地主の依頼を受け、借家人の立ち退き交渉に当たる。法律で借り手の権利が守られているため、地上げ屋は立ち退き料を払うことで解決していく。頬を札束で叩いて、立ち退いてもらうのだ。
札束が飛び交う立ち退き交渉。ここでは、人間のエゴと欲が剥き出しに、そして人間の素の部分が露わになる。その煩悩の海を小川は20年、泳ぎ続けてきた。勉強会で子供に説く内容。それはすべて、小川のこれまでの体験で学んできたことで、生き死にの中で身につけてきたことである。地上げ屋は日陰の稼業。だが、人間と社会を裏から見続けた小川だからこそ、見える真実もある。
********************
世知辛い世の中。まともに生きていくのは大変なことや。なのに、親も学校も、子供に大切なことは何も教えへん。社会を生き抜く知恵や心の教育が今こそ、必要なのと違うか。「地上げ屋風情が何を」と思う人もおるかもしれんが、オレも子の親。幸せになってほしいという想いは誰にも負けへん。
じゃ、今からオレがやっている勉強会の一部を見せるわ。自分が今まで生きてきた中でつかんだコツや読書で理解した事柄を、小川流に解釈したこと。辞書には書いていないオレだけの言葉や。1回目は「心の強さ」について。興味のある人はつき合って。いろいろと差し支えるから、オレら家族は匿名にさせてもらうけど堪忍な。
TO BE CONTINUED…
【第1話】「心を強くするために、絶対にやったらアカンこと」
いじめ自殺が相次ぐ昨今。いじめに回らない、いじめに負けない強い子供にしたい。そう考えた地上げ屋の小川は自分の子供に道徳教育を始めた。月に1度、1つのテーマを決めて、自分の体験を基にその意味を子供たちに考えさせる。この地上げ屋自身、カネと欲望が渦巻く不動産業界、特に立ち退き交渉という札束が飛び交う世界で人の本質を見続けてきた。そんな悪漢だからこそ話せる道徳論とは。 ----------- ◆「(D)心の強さとは」 -----------
小学生のいじめ自殺に衝撃を受けた小川は、子供に対する(D)心の教育を始める。最初のテーマは「(D)心の強さ」。他人をいじめない、いじめられても折れない ――。そのことを、教えようと考えたからだ。そして、土曜日の午前、小川は2人の子供を居間に呼び寄せた。2006年11月25日のことである。
************************
小川:よっしゃ、お前ら、こっちに来い。勉強会を始めるで。ノートに日付とテーマを書いとけよ。今日のテーマは「(D)心の強さ」。お前ら、「人間の強さ」ってどういうことやと思う?
サクラ:何やろ。ケンカが強いとか、空手を習うとか。
小川:そんなん違う。本当の強さっていうのは、“(D)心が強い”ってことを言うねん。肉体的に強いとかではないねん。
サクラ:そうなん?
小川:おう、そうや。(D)心が強くない人間は人をいじめたり、物を盗ったりしてしまう。(D)心が弱ければ、いじめられてもはねのけることがでけへん。逆に、(D)心が強ければめげへんやろ。よう覚えときや。(D)心が強うなかったら全然アカンねん。サクラやリュウジは(D)心が強い方がいいか?
リュウジ:はい。
小川:ほな、どうしたら(D)心を強くできると思う?
サクラ:決めたことを、やめずに続ける。
リュウジ:何だか知らんけど、エエことをする。
サクラ:人をいじめない。
小川:まっ、そういうことや。ただ、それだけじゃあないで。大切なのは「(E)嘘をつかへん」ということや。(E)嘘をつくと人は段々、弱くなる。(E)嘘をつかんと(F)正直に生きるということが大切なんや。ほんだら、何で(E)嘘をつけへんかったら(D)心が強くなるか、何で(E)嘘をついたら(D)心が弱くなるか、分かるか。
リュウジ:何でやろ。
小川:前にサクラ、家族の貯金箱から100円玉を盗ったことがあったやろ。最初は盗ってないと言うとったけど、その時お前、目がウルウルしとった。お父ちゃんと母さんは「サクラや」とすぐに分かったで。あん時、お前は不安やったろ。
サクラ:(うなずく)
小川:盗ったくせに盗ってないと(E)嘘をついて、苦しかったからと違うか。それだけ、オドオドしとった。もの凄く(D)心が弱くなっとった。(F)正直に「盗りました」と言う方がどれだけ楽か。100円玉を盗ったのは失敗や。でも、失敗しても(F)正直に謝れば、(D)心は強くなんねんで。ほな、どうしたら(E)嘘をつかんようにできるか、分かるか。
サクラ:とにかく(F)正直に何でも言うとか。
小川:サクラは何でお金を盗ってしもうたん? 「お金が欲しい」という(G)欲があったからと違うか。人間、過度の(G)欲を持つから失敗する。(G)欲を捨てれば、(E)嘘をつく必要はなくなんねん。サクラだけじゃないで。リュウジかて、一生懸命やらな失敗するやろ。これは、さぼりたいという(G)欲があるからや。じゃあ、書いとけよ。
「本当の強さは、(D)心の強さです」 「(D)心を強くするには(F)正直であるべきです」 「失敗しても(E)嘘をつかないためには(G)欲を捨てる方がいいです」 「いつも(F)正直に生きれば、(D)心は強くなります」
小川:何で「(G)欲を捨てろ」と言うか分かるか。お前らに、何にも負けない強い人間になってほしいと思うからや。あと、人生が(E)とイコールではないということも分かってほしい。(G)欲は人の目を曇らせる。お父ちゃん、(G)欲にまみれた人間をそれこそ嫌というほど見てきたで。あの10年前の光景、今でも目に浮かぶわ。
********************
1999年、小川は神戸市の資産家が所有していた底地を買った。底地とは、借地権が付いた不動産のこと。一般的に、土地と建物の所有権は同じ場合が多いが、中には土地と建物の所有者が別のことがある。この土地だけの所有権を底地という。小川は底地の売買契約において、忘れ得ない体験をした。
あの土地は、JR西日本の三ノ宮駅から徒歩15分くらいのところにあった。底地の面積は2000坪。価格にして10億円ほどやったろうか。所有者の資産家が亡くなり、4人の子供が相続のために売却するということだった。それで、契約の場に行ったんやけど、そら驚いたで。
4人姉弟、みな顔同じ。女2人に男2人。60歳前後で髪型を除くと顔はまったく同じや。なのに、契約の最中、それぞれが連れている弁護士としか話をせん。姉弟同士、目も合わさんのやで。遺産相続の過程で何があったか、それは知らんけれども、顔も同じ姉弟が、弁護士を通してしか話をしないのは異常や。
こいつらの親は資産家だったと思うよ。でも、親はこの4人の姿を想像したろうか。もしこの光景を見たら、何のために資産を残したと思うのと違うか。こんな話、掃いて捨てるほどある。(大阪市)西成でパチンコ屋を経営していたオッサンの話もしておこうか。 このオッサン、50億円を残して死んでもうた。2人の息子が10億円ずつ相続したんやけど、10億円をもらった弟、大阪・ミナミのアングラカジノでハメられて、逆に10億円の借金を作った。最後は兄貴がケツを拭いたが、それで兄弟の縁は終わり。あのオッサン、こんな結末になるとは夢にも思わなかったろうに。 「(G)欲は人の目を曇らせる」
オレが地上げの世界に身を投じたのは、うなるほどに(E)儲けをしたかったからや。実際、(E)も儲けたと思う。でも、こいつらを見ていて、何が人の幸せか分からなくなった。少なくとも、(E)が人を幸せにするわけではない。同じ顔の4人を眺めながらつくづく思った。
「(G)欲を捨てる」。これは立ち退き交渉にも当てはまるんやで。「家を出たない」と言うてる人に出ていってもらうのが立ち退き交渉の仕事や。「あんた、(建物を借りて住んでいる)借家人やろ。大家が出てけ言うとるから出てって」。いきなり来た地上げ屋にこんなん言われて出ていく奴はおらん。反発するだけや。
立ち退き交渉のコツは相手になりきること。相手の立場に立ち、相手の懸念を探る。そして、その懸念を理解したうえでこちらの提案をしていく。そのためには、相手になりきらないとイカン。相手はオレのことをどう考えているか、どこを突けば前向きに考えてもらえるか。相手の立場に立てば、オレの言葉は相手の琴線に響くはずや。まあ、このあたりの交渉術については別の機会に話そうか。
相手の気持ちに立つ――。実は、その最大の障害が「(G)欲」やねん。オレら地上げ屋の(G)欲は「予算よりも安く立ち退き料を収めて自分の取り分を増やす」ということや。でも、そんなことばかり考えていたら、相手のどこをつつけばいいか、分からなくなる。立ち退き交渉では、水が高いところから低いところに流れるように、人の心理を読むことが重要。濁った水の中におると、それが見えん。
それを痛感した出来事が、2年前にあった。
ファンドによる不動産の取得がピークを迎えつつあった2006年の夏。小川は東京・銀座にある雑居ビルの地上げを手がけた。地上9階建てのこのビルは、クラブやスナックなどが軒を連ねる「バービル」である。ある不動産会社が競売で落札し、小川に立ち退き交渉を依頼していた。
立ち退き交渉に取りかかった段階で入居していたテナントは9軒。そのうち1軒のスナックは個人ではなく、法人契約になっていた。このスナックが法人登記をしたのは競売の最中。そして、別の会社に法人ごと売却されている。「暴力団筋による立ち退き料目的の法人売買」。すぐに悟った小川は徹底抗戦に出る。
この物件の立ち退き交渉は部下にやらせたんやけど、この法人だけが「絶対に出ない」の一点張りやった。興信所を使って調べてみると、写真に写っているのはみなヤクザみたいな連中ばかり。実際、夜8時30分頃にうちの社員に飲みに行かせると、チンピラが出てきて「店はやっていない」と言いよる。スナックを営業する気はゼロ。立ち退き交渉を見越して、こいつら店のママから安値で会社を買ったんやろう。
しばらくすると、弁護士が介入してきて、4億8000万円なら出ると言いおった。スポンサーの不動産会社はそれでOKと言うたが、相場は4000 万~6000万円というところ。バカ高やで。お前、天下の小川がわけの分からん輩の言い値でやられたとなっては沽券にかかわる。どうせブラフ。それを見越したオレは、「お前、一生ここで営業してろ」。そう言って、交渉を蹴ったんや。
そしたら、スポンサーが「時間がないから4億8000万円で契約してくれ」と言いおった。しかし、オレはプライドにかけて引けない状態になっている。荒くたい連中ならオレをさらうで。オレがどけば、4億8000万円で決まりや。だから、嫁に言ったわ。「オレ、さらわれるかもしれへん」って。
それで、1つの絵を描いた。スポンサーが小川を降ろしたことにして、立ち退き交渉に弁護士を入れる。立ち退き費用は4億円に減額するという絵や。もしこの条件で決まらなければ、差額の8000万円はオレが払うつもりだった。この案件の報酬は1億円。8000万円を捨てても構わないと思うた。
結局、目論見通り、4億円で話がついた。立ち退き料欲しさに会社を買ったわけやから、4億8000万円だろうが、4億円だろうが何も変わらない ――。そう確信しとった。もちろん、立ち退き交渉がまとまらない可能性、オレがさらわれる可能性、いろいろリスクがあってホンマにヒヤヒヤしたのは確かや。
まあ、交渉はまとまったし、1週間で8000万円下げたことでオレの顔も立ったからよかったけどな。相手の腹を読んで、自分の(G)欲を捨てた。だから、うまくいったわけや。
小川:エエか。「(G)欲を捨てれば、下手な失敗をしないでもすむ。失敗しなければ、いつも(F)正直でいられる。いつも(F)正直に生きれば、(D)心は強くなる」。いいか、ノートにしっかり書いとけよ。
サクラ:はい。
小川:よし。じゃあ、今日はここまで。次は「克己心」。お父ちゃん、今でこそ「(G)欲を捨てろ」と偉そうに言うけど、若い頃は(G)欲に目が眩んどった。その頃の話をしようか。
TO BE CONTINUED…
いじめ自殺が相次ぐ昨今。いじめに回らない、いじめに負けない強い子供にしたい。そう考えた地上げ屋の小川は自分の子供に道徳教育を始めた。月に1度、1つのテーマを決めて、自分の体験を基にその意味を子供たちに考えさせる。この地上げ屋自身、カネと欲望が渦巻く不動産業界、特に立ち退き交渉という札束が飛び交う世界で人の本質を見続けてきた。そんな悪漢だからこそ話せる道徳論とは。 ----------- ◆「(D)心の強さとは」 -----------
小学生のいじめ自殺に衝撃を受けた小川は、子供に対する(D)心の教育を始める。最初のテーマは「(D)心の強さ」。他人をいじめない、いじめられても折れない ――。そのことを、教えようと考えたからだ。そして、土曜日の午前、小川は2人の子供を居間に呼び寄せた。2006年11月25日のことである。
************************
小川:よっしゃ、お前ら、こっちに来い。勉強会を始めるで。ノートに日付とテーマを書いとけよ。今日のテーマは「(D)心の強さ」。お前ら、「人間の強さ」ってどういうことやと思う?
サクラ:何やろ。ケンカが強いとか、空手を習うとか。
小川:そんなん違う。本当の強さっていうのは、“(D)心が強い”ってことを言うねん。肉体的に強いとかではないねん。
サクラ:そうなん?
小川:おう、そうや。(D)心が強くない人間は人をいじめたり、物を盗ったりしてしまう。(D)心が弱ければ、いじめられてもはねのけることがでけへん。逆に、(D)心が強ければめげへんやろ。よう覚えときや。(D)心が強うなかったら全然アカンねん。サクラやリュウジは(D)心が強い方がいいか?
リュウジ:はい。
小川:ほな、どうしたら(D)心を強くできると思う?
サクラ:決めたことを、やめずに続ける。
リュウジ:何だか知らんけど、エエことをする。
サクラ:人をいじめない。
小川:まっ、そういうことや。ただ、それだけじゃあないで。大切なのは「(E)嘘をつかへん」ということや。(E)嘘をつくと人は段々、弱くなる。(E)嘘をつかんと(F)正直に生きるということが大切なんや。ほんだら、何で(E)嘘をつけへんかったら(D)心が強くなるか、何で(E)嘘をついたら(D)心が弱くなるか、分かるか。
リュウジ:何でやろ。
小川:前にサクラ、家族の貯金箱から100円玉を盗ったことがあったやろ。最初は盗ってないと言うとったけど、その時お前、目がウルウルしとった。お父ちゃんと母さんは「サクラや」とすぐに分かったで。あん時、お前は不安やったろ。
サクラ:(うなずく)
小川:盗ったくせに盗ってないと(E)嘘をついて、苦しかったからと違うか。それだけ、オドオドしとった。もの凄く(D)心が弱くなっとった。(F)正直に「盗りました」と言う方がどれだけ楽か。100円玉を盗ったのは失敗や。でも、失敗しても(F)正直に謝れば、(D)心は強くなんねんで。ほな、どうしたら(E)嘘をつかんようにできるか、分かるか。
サクラ:とにかく(F)正直に何でも言うとか。
小川:サクラは何でお金を盗ってしもうたん? 「お金が欲しい」という(G)欲があったからと違うか。人間、過度の(G)欲を持つから失敗する。(G)欲を捨てれば、(E)嘘をつく必要はなくなんねん。サクラだけじゃないで。リュウジかて、一生懸命やらな失敗するやろ。これは、さぼりたいという(G)欲があるからや。じゃあ、書いとけよ。
「本当の強さは、(D)心の強さです」 「(D)心を強くするには(F)正直であるべきです」 「失敗しても(E)嘘をつかないためには(G)欲を捨てる方がいいです」 「いつも(F)正直に生きれば、(D)心は強くなります」
小川:何で「(G)欲を捨てろ」と言うか分かるか。お前らに、何にも負けない強い人間になってほしいと思うからや。あと、人生が(E)とイコールではないということも分かってほしい。(G)欲は人の目を曇らせる。お父ちゃん、(G)欲にまみれた人間をそれこそ嫌というほど見てきたで。あの10年前の光景、今でも目に浮かぶわ。
********************
1999年、小川は神戸市の資産家が所有していた底地を買った。底地とは、借地権が付いた不動産のこと。一般的に、土地と建物の所有権は同じ場合が多いが、中には土地と建物の所有者が別のことがある。この土地だけの所有権を底地という。小川は底地の売買契約において、忘れ得ない体験をした。
あの土地は、JR西日本の三ノ宮駅から徒歩15分くらいのところにあった。底地の面積は2000坪。価格にして10億円ほどやったろうか。所有者の資産家が亡くなり、4人の子供が相続のために売却するということだった。それで、契約の場に行ったんやけど、そら驚いたで。
4人姉弟、みな顔同じ。女2人に男2人。60歳前後で髪型を除くと顔はまったく同じや。なのに、契約の最中、それぞれが連れている弁護士としか話をせん。姉弟同士、目も合わさんのやで。遺産相続の過程で何があったか、それは知らんけれども、顔も同じ姉弟が、弁護士を通してしか話をしないのは異常や。
こいつらの親は資産家だったと思うよ。でも、親はこの4人の姿を想像したろうか。もしこの光景を見たら、何のために資産を残したと思うのと違うか。こんな話、掃いて捨てるほどある。(大阪市)西成でパチンコ屋を経営していたオッサンの話もしておこうか。 このオッサン、50億円を残して死んでもうた。2人の息子が10億円ずつ相続したんやけど、10億円をもらった弟、大阪・ミナミのアングラカジノでハメられて、逆に10億円の借金を作った。最後は兄貴がケツを拭いたが、それで兄弟の縁は終わり。あのオッサン、こんな結末になるとは夢にも思わなかったろうに。 「(G)欲は人の目を曇らせる」
オレが地上げの世界に身を投じたのは、うなるほどに(E)儲けをしたかったからや。実際、(E)も儲けたと思う。でも、こいつらを見ていて、何が人の幸せか分からなくなった。少なくとも、(E)が人を幸せにするわけではない。同じ顔の4人を眺めながらつくづく思った。
「(G)欲を捨てる」。これは立ち退き交渉にも当てはまるんやで。「家を出たない」と言うてる人に出ていってもらうのが立ち退き交渉の仕事や。「あんた、(建物を借りて住んでいる)借家人やろ。大家が出てけ言うとるから出てって」。いきなり来た地上げ屋にこんなん言われて出ていく奴はおらん。反発するだけや。
立ち退き交渉のコツは相手になりきること。相手の立場に立ち、相手の懸念を探る。そして、その懸念を理解したうえでこちらの提案をしていく。そのためには、相手になりきらないとイカン。相手はオレのことをどう考えているか、どこを突けば前向きに考えてもらえるか。相手の立場に立てば、オレの言葉は相手の琴線に響くはずや。まあ、このあたりの交渉術については別の機会に話そうか。
相手の気持ちに立つ――。実は、その最大の障害が「(G)欲」やねん。オレら地上げ屋の(G)欲は「予算よりも安く立ち退き料を収めて自分の取り分を増やす」ということや。でも、そんなことばかり考えていたら、相手のどこをつつけばいいか、分からなくなる。立ち退き交渉では、水が高いところから低いところに流れるように、人の心理を読むことが重要。濁った水の中におると、それが見えん。
それを痛感した出来事が、2年前にあった。
ファンドによる不動産の取得がピークを迎えつつあった2006年の夏。小川は東京・銀座にある雑居ビルの地上げを手がけた。地上9階建てのこのビルは、クラブやスナックなどが軒を連ねる「バービル」である。ある不動産会社が競売で落札し、小川に立ち退き交渉を依頼していた。
立ち退き交渉に取りかかった段階で入居していたテナントは9軒。そのうち1軒のスナックは個人ではなく、法人契約になっていた。このスナックが法人登記をしたのは競売の最中。そして、別の会社に法人ごと売却されている。「暴力団筋による立ち退き料目的の法人売買」。すぐに悟った小川は徹底抗戦に出る。
この物件の立ち退き交渉は部下にやらせたんやけど、この法人だけが「絶対に出ない」の一点張りやった。興信所を使って調べてみると、写真に写っているのはみなヤクザみたいな連中ばかり。実際、夜8時30分頃にうちの社員に飲みに行かせると、チンピラが出てきて「店はやっていない」と言いよる。スナックを営業する気はゼロ。立ち退き交渉を見越して、こいつら店のママから安値で会社を買ったんやろう。
しばらくすると、弁護士が介入してきて、4億8000万円なら出ると言いおった。スポンサーの不動産会社はそれでOKと言うたが、相場は4000 万~6000万円というところ。バカ高やで。お前、天下の小川がわけの分からん輩の言い値でやられたとなっては沽券にかかわる。どうせブラフ。それを見越したオレは、「お前、一生ここで営業してろ」。そう言って、交渉を蹴ったんや。
そしたら、スポンサーが「時間がないから4億8000万円で契約してくれ」と言いおった。しかし、オレはプライドにかけて引けない状態になっている。荒くたい連中ならオレをさらうで。オレがどけば、4億8000万円で決まりや。だから、嫁に言ったわ。「オレ、さらわれるかもしれへん」って。
それで、1つの絵を描いた。スポンサーが小川を降ろしたことにして、立ち退き交渉に弁護士を入れる。立ち退き費用は4億円に減額するという絵や。もしこの条件で決まらなければ、差額の8000万円はオレが払うつもりだった。この案件の報酬は1億円。8000万円を捨てても構わないと思うた。
結局、目論見通り、4億円で話がついた。立ち退き料欲しさに会社を買ったわけやから、4億8000万円だろうが、4億円だろうが何も変わらない ――。そう確信しとった。もちろん、立ち退き交渉がまとまらない可能性、オレがさらわれる可能性、いろいろリスクがあってホンマにヒヤヒヤしたのは確かや。
まあ、交渉はまとまったし、1週間で8000万円下げたことでオレの顔も立ったからよかったけどな。相手の腹を読んで、自分の(G)欲を捨てた。だから、うまくいったわけや。
小川:エエか。「(G)欲を捨てれば、下手な失敗をしないでもすむ。失敗しなければ、いつも(F)正直でいられる。いつも(F)正直に生きれば、(D)心は強くなる」。いいか、ノートにしっかり書いとけよ。
サクラ:はい。
小川:よし。じゃあ、今日はここまで。次は「克己心」。お父ちゃん、今でこそ「(G)欲を捨てろ」と偉そうに言うけど、若い頃は(G)欲に目が眩んどった。その頃の話をしようか。
TO BE CONTINUED…
【第2話】サイフに常時100万円、それで己に克てたのか?
地上げ屋、小川宇満雄は月1回、2人の子供に道徳教育を始めた。いじめに回らない、いじめに負けない子供にしたいと考えたからだ。最初に選んだテーマは「心の強さとは」。人間の強さは心の強さであると説く。立ち退き交渉という札束が飛び交う世界で人の本質を見続けた男の道徳論とは。
------ ◆「克己心」 ------
小川:おい、お前ら。今日のテーマは克己心(こっきしん)や。
サクラ:何?
小川:知らんと思うけど、こう書くんや。「克」「己」「心」。
サクラ:ほんで、これどういう意味?
小川:おう、これはな、自分に克つ心っていう意味や。「己」は自分自身。「克つ」は「勝つ」と同じような意味や。
リュウジ:えっ、自分と勝負するん?
小川:まっ、そやな。ある意味、自分自身との闘いやわな。辞書には「自分の欲望や邪念にうち勝つこと」ってあるで。前にお母さんがユウキ(※編集部注:2歳になるサクラとリュウジの妹)を生んだ時、サクラは千羽鶴を折ったやろ。あれ、結構しんどかったと違うか。
サクラ:しんどかった。
小川:「もうしんどいなぁ」「やめようかなぁ」という自分と、「アカンアカン、頑張って最後まで完成させな」という自分がおった。サクラはその時、自分との闘いに勝ったから、ユウキが生まれる前に千羽鶴を完成させることができたんや。
サクラ:ふーん。
お母さん:そやで、サクラは偉いな。ありがとう。
小川:まあ、こういうことも克己心の1つや。前に話した「心の強さ」はこの言葉に関係するんやで。
リュウジ:そうなん?
小川:そら、そうやろ。やっぱり人間、楽な方を取りたい。学校でも授業中に先生の話を聞くよりも、友達とコソコソ話している方が面白いやろ。そういう時は、克己心という言葉を思い出せ。大事な言葉やぞ。大人になっても絶対、忘れるなよ。分かったな。
サクラ&リュウジ:ハイ!
小川:ほな、書けよ。
「克己心とは、自分に勝つ心。すなわち強い心。すなわち実行力」 「すべての人間の力は克己心を持つ人に備わる」 「克己心とは、物事を人のせいにしない、人を頼らない、すべて自己責任で生きる」 「克己心とは、自分の立場を考えて正しい行いをするために必要な力」
小川:ちょっと難しすぎたかな。でもな、お前らに、欲に負けない強い人間になってほしいから難しいことを言うんや。お父ちゃんな、自分を信じてここまでやってきた。カネを稼ぐこともできたと思う。それについては、何も後悔してないで。ただな、今から考えると無茶もした。克己心という言葉に照らして、自分の欲望に克ったんやろうか、と思うこともある。
********************
小川は1959年に愛媛県で生まれた。ミカン畑を営む生家は集落の中でも裕福だったが、小川が2歳の時に父親が小豆相場に手を出して散財。愛媛の生家を追われた。その後、一家揃って大阪に上京。すぐに父親は森ノ宮(大阪市城東区)で風呂釜の製造を始めた。
高度経済成長の追い風もあり、父親の会社は順調に業績を伸ばした。最盛期には、東成区に400坪の工場を所有するなど隆盛を誇った。だが、経済成長の鈍化とともに会社は傾く。そして1981年、小川が22歳の時に父親の会社は倒産した。
オヤジは投機に手を出して、実家を勘当された。そんな経緯があるから、日々の生活は質素やった。酒は飲まんし、タバコも吸わない。毎日、判で押したように夜7時に帰ってきて、オレらと一緒に夕ご飯を食べていた。
世間ズレしてなかったから、よく騙されていた。オヤジは一度、手形のパクリにあった。後で聞いた話やが、オヤジを騙した奴、そのカネを元手に九州でラーメン屋とスーパーの経営を始めて大成功したんやて。オヤジを見ていて、騙されるより騙す側にならなきゃアカン、と子供ながらに思った。
だからと言っては何やけど、カネを儲けたかった。
高校卒業後、オレはうどんチェーン店でうどんを打ち始めた。月給は13万円。カネ儲けをしたかったんやけど、何をやればエエのか、分からなかったんや。すぐに仕事を覚えたオレは、ジャスコの中のうどん屋で働き始めた。
----------------- ◆「迷惑をかけるのはまず身内から」 -----------------
そしたらある日、中学時代の連れがベッピンの女を連れて店に来たんや。話を聞いてみると、こいつ、ミナミで水商売をしとった。月の手取りは22万円、ベッピンの女はホステスや。うらやましくなって、そのままうどん屋を辞めてもうた。新しい職場は韓国クラブのボーイ。要領はいいから、始めてすぐに月給30万円を超えたで。
自分で言うのは何やけど、この頃は本当にすれていた。
高校の同級生にサラ金行かせて13万5000円を借りさせるやろ。5000円だけ戻して後は無視。借金、そいつに返させた。弟が貯めてた20万円の定期預金を解約させたこともあったな。その金は女遊びに使ってしもうた。
お袋は激怒したが、オレにはオレの理屈がある。「お前、『人に迷惑をかけるな』って言うやろ。迷惑をかけるのはまず身内からと違うか」って。まったく身勝手な理屈やな(笑)。この頃、何か内面から湧き出るパワーのようなものがあって、毎晩のようにケンカしとったな。
20歳で夜のミナミに飛び込んだ小川。「オレのモットーは『働く以上は一生懸命』」。こう語るように、誰よりも早く出社し、店の掃除や集金業務に精を出した。すぐに高卒の勤め人の倍以上のカネを稼ぐようになったが、数年も経つと、黒服生活に飽き始める。その時、小川はひとりの男に出会う。1984 年の秋である。
オレが店長していたクラブの常連さんの中に、いつも1人で飲みに来る作業服のオッサンがいた。一晩で10万円ほど使うエエお客さんや。このオッサン、サイフにいつも100万円の束を入れていた。驚くやん。それである時、聞いたんや。「社長、何の商売してるんですか」って。この人、鉄工所の社長だったんやけど、その時に吐いた言葉が今でも忘れられない。
「ミナミで飲む時は(サイフに)100万円ないと不安や」
なんやそれ。その当時、オレは24歳のガキ。オヤジの会社が潰れた後で苦労してる頃や。オッサンの話を聞いて、男としてこの人くらいにならなアカンと目が覚めた。「サイフに100万円束をつめてミナミを歩く」。この時、それが人生の目標になった。
水商売の給料は50万円。勤め人の給料を考えれば悪くない金額や。でも、水商売など知れている。かといって、高卒のオレにできる商売は限られる。徒手空拳の人間には口八丁、手八丁のビジネスしか無理。その時、頭に浮かんだのが証券会社と不動産だった。
何で不動産に決めたのかって? 証券会社には大学卒でなきゃ就職できないイメージがあるやん。その点、不動産は高卒のオレでもOKやろ。それで、(大阪市営地下鉄御堂筋線)江坂駅前の不動産仲介会社に入った。見習い期間中の2カ月間は月給30万円。見習い期間を過ぎると20万円に落ちて歩合制になるという話やった。2カ月で(この店の仲介実績の)新記録を作ったよ。
この会社には、物件を借りに来た客に対して3つの物件を案内するという仲介マニュアルがあった。最初に提示された物件で即決する奴はまずいない。 “当て物”として2つの物件を紹介するという発想や。でも、よく考えれば、2つの物件を紹介しても、3件目で決まる保証はどこにもない。ならば無駄なことをせずに、初めに本命を見せればいい。そう考えたわけやな。
結局、2番目に本命を紹介することにしたけど、ほかの連中より1件少ないだけ効率的。すぐに成績が伸びた。オレは不動産の素人やったけど、初めの1カ月で100万円の仲介料を稼いだで。2カ月も経つと、この会社で学ぶことはなくなった。そのまま独立したよ。
1986年夏、独立した小川はミナミにあるワンルームマンションの一室で不動産仲介業を始めた。前年に円とドルの為替レートの大幅修正を決めたプラザ合意が成立。内需拡大へと舵を切った日本はバブル経済に向けて階段を上り始めた。それに歩を合わせるように、小川も不動産業界に乗り出したわけだ。
もっとも、その幕開けは甚だ乱暴なものだった。不動産仲介を始める場合、不動産会社は宅地建物取引主任者を置く。独立した小川が国家資格である宅建の資格を取るか、資格を持つ人間を採用する必要がある。だが、国家資格など取れるわけがない。そう考えた小川はあり得ない行動に出た。
宅建の資格は不動産売買でトラブルが起きた時に必要なものやろ。普通に考えれば、不動産仲介でトラブルなんて起きない。だったら、偽造でいいやん。そう思うたから、ミナミにワンルームを借りて、法人登記もしてないのに「株式会社××」という看板を掲げ、名刺に「大阪府知事△△ 宅地建物取引主任者」と刷り込んだ。今から思うとめちゃくちゃやけど、そういう人種だったんや。
オレの賢いところは、クラブで働く“ジャパゆきさん”を相手にしたことや。みんな観光ビザで来日して夜の街で働き出す。保証人などいるわけがない。こいつらに、「日本の家主は誰も貸さない。オレが保証人になってやる」と言って、バンバン仲介していった。百発百中やったで。
ちなみに、紹介先はすべて末野興産のマンション。あの末野興産や(編集部注:末野興産は旧住宅金融専門会社の大口融資先だった不動産会社。末野謙一元社長はバブル時に「借金王」の異名を取った。1996年に大阪地裁が破産宣告)。何でか言うたら、末野興産は仲介手数料として、通常よりも多い家賃の 2カ月分を戻してくれたからや。家主からの手数料のほかに、入居者からも手数料として1カ月分が入る。末野興産に1人紹介すれば、20万円は儲かる計算。だから、バンバン仲介したわ。
当時の稼ぎは月100万円。夢に向かってもう一歩というところ。「稼ぐためには手段を選ばず」ということやな。まあ、今から振り返れば、自らの欲望に負けていたんやと思う。つまり、克己心が足りなかったということや。当時はそんなん全く考えてなかったけど。
じゃあ、次のテーマは「人生について」。無茶した時代の話をもう少しするからつき合ってや。
------ ◆「克己心」 ------
小川:おい、お前ら。今日のテーマは克己心(こっきしん)や。
サクラ:何?
小川:知らんと思うけど、こう書くんや。「克」「己」「心」。
サクラ:ほんで、これどういう意味?
小川:おう、これはな、自分に克つ心っていう意味や。「己」は自分自身。「克つ」は「勝つ」と同じような意味や。
リュウジ:えっ、自分と勝負するん?
小川:まっ、そやな。ある意味、自分自身との闘いやわな。辞書には「自分の欲望や邪念にうち勝つこと」ってあるで。前にお母さんがユウキ(※編集部注:2歳になるサクラとリュウジの妹)を生んだ時、サクラは千羽鶴を折ったやろ。あれ、結構しんどかったと違うか。
サクラ:しんどかった。
小川:「もうしんどいなぁ」「やめようかなぁ」という自分と、「アカンアカン、頑張って最後まで完成させな」という自分がおった。サクラはその時、自分との闘いに勝ったから、ユウキが生まれる前に千羽鶴を完成させることができたんや。
サクラ:ふーん。
お母さん:そやで、サクラは偉いな。ありがとう。
小川:まあ、こういうことも克己心の1つや。前に話した「心の強さ」はこの言葉に関係するんやで。
リュウジ:そうなん?
小川:そら、そうやろ。やっぱり人間、楽な方を取りたい。学校でも授業中に先生の話を聞くよりも、友達とコソコソ話している方が面白いやろ。そういう時は、克己心という言葉を思い出せ。大事な言葉やぞ。大人になっても絶対、忘れるなよ。分かったな。
サクラ&リュウジ:ハイ!
小川:ほな、書けよ。
「克己心とは、自分に勝つ心。すなわち強い心。すなわち実行力」 「すべての人間の力は克己心を持つ人に備わる」 「克己心とは、物事を人のせいにしない、人を頼らない、すべて自己責任で生きる」 「克己心とは、自分の立場を考えて正しい行いをするために必要な力」
小川:ちょっと難しすぎたかな。でもな、お前らに、欲に負けない強い人間になってほしいから難しいことを言うんや。お父ちゃんな、自分を信じてここまでやってきた。カネを稼ぐこともできたと思う。それについては、何も後悔してないで。ただな、今から考えると無茶もした。克己心という言葉に照らして、自分の欲望に克ったんやろうか、と思うこともある。
********************
小川は1959年に愛媛県で生まれた。ミカン畑を営む生家は集落の中でも裕福だったが、小川が2歳の時に父親が小豆相場に手を出して散財。愛媛の生家を追われた。その後、一家揃って大阪に上京。すぐに父親は森ノ宮(大阪市城東区)で風呂釜の製造を始めた。
高度経済成長の追い風もあり、父親の会社は順調に業績を伸ばした。最盛期には、東成区に400坪の工場を所有するなど隆盛を誇った。だが、経済成長の鈍化とともに会社は傾く。そして1981年、小川が22歳の時に父親の会社は倒産した。
オヤジは投機に手を出して、実家を勘当された。そんな経緯があるから、日々の生活は質素やった。酒は飲まんし、タバコも吸わない。毎日、判で押したように夜7時に帰ってきて、オレらと一緒に夕ご飯を食べていた。
世間ズレしてなかったから、よく騙されていた。オヤジは一度、手形のパクリにあった。後で聞いた話やが、オヤジを騙した奴、そのカネを元手に九州でラーメン屋とスーパーの経営を始めて大成功したんやて。オヤジを見ていて、騙されるより騙す側にならなきゃアカン、と子供ながらに思った。
だからと言っては何やけど、カネを儲けたかった。
高校卒業後、オレはうどんチェーン店でうどんを打ち始めた。月給は13万円。カネ儲けをしたかったんやけど、何をやればエエのか、分からなかったんや。すぐに仕事を覚えたオレは、ジャスコの中のうどん屋で働き始めた。
----------------- ◆「迷惑をかけるのはまず身内から」 -----------------
そしたらある日、中学時代の連れがベッピンの女を連れて店に来たんや。話を聞いてみると、こいつ、ミナミで水商売をしとった。月の手取りは22万円、ベッピンの女はホステスや。うらやましくなって、そのままうどん屋を辞めてもうた。新しい職場は韓国クラブのボーイ。要領はいいから、始めてすぐに月給30万円を超えたで。
自分で言うのは何やけど、この頃は本当にすれていた。
高校の同級生にサラ金行かせて13万5000円を借りさせるやろ。5000円だけ戻して後は無視。借金、そいつに返させた。弟が貯めてた20万円の定期預金を解約させたこともあったな。その金は女遊びに使ってしもうた。
お袋は激怒したが、オレにはオレの理屈がある。「お前、『人に迷惑をかけるな』って言うやろ。迷惑をかけるのはまず身内からと違うか」って。まったく身勝手な理屈やな(笑)。この頃、何か内面から湧き出るパワーのようなものがあって、毎晩のようにケンカしとったな。
20歳で夜のミナミに飛び込んだ小川。「オレのモットーは『働く以上は一生懸命』」。こう語るように、誰よりも早く出社し、店の掃除や集金業務に精を出した。すぐに高卒の勤め人の倍以上のカネを稼ぐようになったが、数年も経つと、黒服生活に飽き始める。その時、小川はひとりの男に出会う。1984 年の秋である。
オレが店長していたクラブの常連さんの中に、いつも1人で飲みに来る作業服のオッサンがいた。一晩で10万円ほど使うエエお客さんや。このオッサン、サイフにいつも100万円の束を入れていた。驚くやん。それである時、聞いたんや。「社長、何の商売してるんですか」って。この人、鉄工所の社長だったんやけど、その時に吐いた言葉が今でも忘れられない。
「ミナミで飲む時は(サイフに)100万円ないと不安や」
なんやそれ。その当時、オレは24歳のガキ。オヤジの会社が潰れた後で苦労してる頃や。オッサンの話を聞いて、男としてこの人くらいにならなアカンと目が覚めた。「サイフに100万円束をつめてミナミを歩く」。この時、それが人生の目標になった。
水商売の給料は50万円。勤め人の給料を考えれば悪くない金額や。でも、水商売など知れている。かといって、高卒のオレにできる商売は限られる。徒手空拳の人間には口八丁、手八丁のビジネスしか無理。その時、頭に浮かんだのが証券会社と不動産だった。
何で不動産に決めたのかって? 証券会社には大学卒でなきゃ就職できないイメージがあるやん。その点、不動産は高卒のオレでもOKやろ。それで、(大阪市営地下鉄御堂筋線)江坂駅前の不動産仲介会社に入った。見習い期間中の2カ月間は月給30万円。見習い期間を過ぎると20万円に落ちて歩合制になるという話やった。2カ月で(この店の仲介実績の)新記録を作ったよ。
この会社には、物件を借りに来た客に対して3つの物件を案内するという仲介マニュアルがあった。最初に提示された物件で即決する奴はまずいない。 “当て物”として2つの物件を紹介するという発想や。でも、よく考えれば、2つの物件を紹介しても、3件目で決まる保証はどこにもない。ならば無駄なことをせずに、初めに本命を見せればいい。そう考えたわけやな。
結局、2番目に本命を紹介することにしたけど、ほかの連中より1件少ないだけ効率的。すぐに成績が伸びた。オレは不動産の素人やったけど、初めの1カ月で100万円の仲介料を稼いだで。2カ月も経つと、この会社で学ぶことはなくなった。そのまま独立したよ。
1986年夏、独立した小川はミナミにあるワンルームマンションの一室で不動産仲介業を始めた。前年に円とドルの為替レートの大幅修正を決めたプラザ合意が成立。内需拡大へと舵を切った日本はバブル経済に向けて階段を上り始めた。それに歩を合わせるように、小川も不動産業界に乗り出したわけだ。
もっとも、その幕開けは甚だ乱暴なものだった。不動産仲介を始める場合、不動産会社は宅地建物取引主任者を置く。独立した小川が国家資格である宅建の資格を取るか、資格を持つ人間を採用する必要がある。だが、国家資格など取れるわけがない。そう考えた小川はあり得ない行動に出た。
宅建の資格は不動産売買でトラブルが起きた時に必要なものやろ。普通に考えれば、不動産仲介でトラブルなんて起きない。だったら、偽造でいいやん。そう思うたから、ミナミにワンルームを借りて、法人登記もしてないのに「株式会社××」という看板を掲げ、名刺に「大阪府知事△△ 宅地建物取引主任者」と刷り込んだ。今から思うとめちゃくちゃやけど、そういう人種だったんや。
オレの賢いところは、クラブで働く“ジャパゆきさん”を相手にしたことや。みんな観光ビザで来日して夜の街で働き出す。保証人などいるわけがない。こいつらに、「日本の家主は誰も貸さない。オレが保証人になってやる」と言って、バンバン仲介していった。百発百中やったで。
ちなみに、紹介先はすべて末野興産のマンション。あの末野興産や(編集部注:末野興産は旧住宅金融専門会社の大口融資先だった不動産会社。末野謙一元社長はバブル時に「借金王」の異名を取った。1996年に大阪地裁が破産宣告)。何でか言うたら、末野興産は仲介手数料として、通常よりも多い家賃の 2カ月分を戻してくれたからや。家主からの手数料のほかに、入居者からも手数料として1カ月分が入る。末野興産に1人紹介すれば、20万円は儲かる計算。だから、バンバン仲介したわ。
当時の稼ぎは月100万円。夢に向かってもう一歩というところ。「稼ぐためには手段を選ばず」ということやな。まあ、今から振り返れば、自らの欲望に負けていたんやと思う。つまり、克己心が足りなかったということや。当時はそんなん全く考えてなかったけど。
じゃあ、次のテーマは「人生について」。無茶した時代の話をもう少しするからつき合ってや。
TO BE CONTINUED…
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