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東野圭吾 / 時生

東野流、リアルドラえもん(劇場版)といったところでしょうか。


親に捨てられ、人生を捨て鉢に生きていた宮本拓実が、未来から来た謎の少年、トキオと出会い、事件に巻き込まれる、、、。


拓実がのび太とするなら、トキオがドラえもん。突如失跡したしずかちゃん(千鶴)を助ける為に、団結しながら大冒険がくりひろげられ、荒んだ心の拓実も次第に成長してゆく、という展開です。実はトキオの正体は、やがて「時生」と名づけられ、17歳で治療不能の病により絶命する、拓実の息子なのですが、この関係は、冒頭ですでに明らかにされます。


仏教の「流転輪廻」を前提にしたような、半ミステリー、半ヒューマンドラマとも言える物語で、時を忘れ、ぐいぐい、この世界に引き込まれました。


かなりヤクザな世界がリアルに描写されるところは、いかにも東野圭吾らしいです。


東野圭吾らしいといえば、人間の心の悪や闇の部分を深くえぐり出しつつも、結論としては、人生を前向きに生きることの大切さ、人の心の温かさや絆を大切にするメッセージに、毎度のことながら、人間存在そのものの意義を問わずにおれなくなります。


なぜ、生まれてきたのか? 生きていることに意味はあるのか?


そして


死んだらどうなるのか?






「明日だけが未来じゃない――。」


トキオの言葉が、意味深に響く作品です。

「人の食べ物を盗むなんて野良犬と一緒じゃないか」
「そうだよ俺は野良犬だよ。犬や猫とおんなじなんだ。(中略)勝手に産むだけ産んで、面倒臭いからって捨てられたんだよ。そんなんでまともな人間になれるわけないだろ」
 するとトキオは悲しげな顔をし、ゆっくりとかぶりを振った。「産んでくれただけでもありがたく思わないと」
「ふん、くさいこというな。子供を作るだけなら誰だってできらあ」拓実は踵を返し、歩き出した。

(11章)

「苦労が顔に出たら惨めやからね。それに悲観しててもしょうがない。そら誰でも恵まれた家庭に生まれたいけど、自分では親を選ばれへん。配られたカードで精一杯勝負するしかないやろ。(中略)たしかにあんたもかわいそうやと思うよ。けど、あんたに配られたカードは、そう悪い手やないと思うけどな」

(22章)

「育てる余裕がなきゃ、最初から産まないことだ。そうだろ? 違うかい?」
「産んでもらえへんかったら、今あんたはいてへんということやで。それでもよかったんか」
「生まれてこなきゃ、いいも悪いもないだろうが」
 竹美はかぶりを振り、ため息をついた。
「あかん、話にならんわ。トキオ君、もうこんなアホはほっとこ」
「生まれてきてよかったと思ったこと、一度もないのかよ」トキオがいった。「あんた今、千鶴さんのことを好きだろ。これからだってあんたは、いろいろな人を好きになるんだよ。それって、生きてるからこそできることなんだぜ」
「(中略)産むだけ産んで、ほったらかしにした人間とは関係ねえよ。犬や猫だって、そんなことはしねえ。自分の力で生きられるまでちゃんと面倒みるぜ」

(36章)

「人間はどんな時でも未来を感じられるんだよ。どんなに短い人生でも、たとえほんの一瞬であっても、生きているという実感さえあれば未来はあるんだよ。あんたにいっておく。明日だけが未来じゃないんだ。それは心の中にある。それさえあれば人は幸せになれる。それを教えられたから、あんたのおかあさんはあんたを産んだんだ。それをなんだ。あんたはなんだ。文句ばっかりいって、自分で何かを勝ち取ろうともしない。あんたが未来を感じられないのは誰のせいでもない。あんたのせいだ。あんたが馬鹿だからだ」

(36章)

「時生は死ぬんじゃない。新しい旅に出るんだ。さっき、そう確認したんじゃないか」

(終章)

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コメント:1

itchy1976の日記 09-02-06 (金) 22:59

東野圭吾『時生』

時生 (講談社文庫)東野 圭吾講談社このアイテムの詳細を見る


今回は、東野圭吾『時生』を紹介します。本書は不治の病を患う息子の最後のときに、宮本拓実は妻に23歳時にあった少年との思い出話である。


宮本拓実の23歳の時はろくでもない生活をしていた。ふてくされてい…

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