麻生太郎 / とてつもない日本

 日本人が日本を語るとき、得てして自虐的なものになりがちですが、『国家の品格』のベストセラーが象徴するように、最近は「もっと日本を見直そう」という風潮になっているのでしょうか。知人に薦められるままに読んだこの『とてつもない日本』は、思いのほか面白かったというのが率直な感想です。  格差社会、少子化問題、学校崩壊……など、暗い面が取り沙汰されることの多い日本に対し、
「ちょっと待っていただきたい。日本は本当にそんなに「駄目な国」なのだろうか。そんなにお先真っ暗なのだろうか」
と問題を投げかけています。決して「反論のための反論」ではなく、具体的な事例を根拠に挙げて、分かりやすい文章で書かれているので素直に読めました。多くの人が漠然と考えているだろうことを、改めて文章で読ませてもらった、という感じです。
 中でも「なるほど」と思ったのが「第二章 日本の底力」「第三章 高齢化を讃える」の章でした。
「ニートも、捨てたもんじゃない」「若者のソフトパワー」
と逆説的な論旨を展開したり、
「「悠々自適」なんて言えるカネのある老人には、しこたまカネを使っていただけばよい。元気のある老人には大いに働いてもらって、活力ある高齢化社会を作っていけばいい。そして、何度も言うけれも、本当に恵まれない人たちは、国が責任を持って支えていく。子供に「いろんな生きかたがある」と教えているのならば、大人も老人も、多様な生き方を示せばいいのである」
と主張するあたりには好感が持てました。平成18年の自由民主党総裁選挙立候補時の遊説で多くの人と接した経験から出た意見なのではないかと思います。麻生さん自身の「私は劣等生だった」との告白も、失礼ながら納得のゆくところです。
 後半は、眼は日本だけでなくアジア全体に向けられます。
「クアラルンプールの少女、北京の少年、ハノイの中学生やジャカルタの高校生は、もはやアイドルを、ハリウッドのつくる銀幕だけに求めはしない。新しいファッションのインスピレーションを、パリにだけ求めようとはしなくなった。日本でも、もっぱらブロンドの美男子に夢中になっていた女性が、隣国のスターに金切り声を上げるようになった。それ以前から香港、中国のスターも人気を呼んだ」
などの記述を読むと、心が明るくなります。もちろん、抱えている問題の多さを考えると、楽観視ばかりは出来ないのが現実でしょうが、こういう前向きな姿勢は好きですね。
 以下私見ですが、とてつもない日本のエネルギーは、聖徳太子以降、引き継がれてきた仏教的思想によるものが大きいと思います。和する心や無常を観ずる心、礼儀や思いやりを重んじる習慣、自利利他の精神などは、もっと評価されるべきなのではないでしょうか。最近では多くの西洋人も仏教に関心を持ち始めているようですが、アインシュタインハイデッガーなどの識者はすでにその必要性を主張していたと聞きます。 (続きを読む…)

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島田紳助 ~ ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する―絶対に失敗しないビジネス経営哲学

 あまりTVを見てこなかったので、島田紳助さんについてはあまりよく知りません。ただ、あのアクの強い個性から、漠然と、人気もあるだろうが敵も多い人なんだろうなあ、と思っていました。  ところが、この本を読んで、島田さんのイメージが少し変わりました。意外に(と言っては失礼ですが)誠実で真面目、物事を分析的に判断する方なのだと思いました。これ、と決めたことにはトコトン本気で取り組むタイプなのだと思います。共感するところが多く、面白く読めました。
 これは、ビジネス経営のハウツー本というより、どんな気持ち・動機でサイドビジネスをやっているのかを書き綴った色合いが強いです。その中で最も印象に残ったのは「顧客満足度より従業員満足度」という姿勢です。この発想の原点は、お客さんの視線、すなわち相手の立場に立った物の見方だと思います。
 お客さんは笑顔が見たくて、店にくるわけではない。あくまで買い物をしたり、食事をするのが目的だ。だけど人間というのは不思議な生き物で、どういう状況でも、心のどこかで他人との心の触れあいを求めている。笑顔がその心を素直に表すものなら、それはどんなサービスにも優るサービスになる。
 つまり、相手のものを奪って自分に利益がきてもそれは幸せとはいえない、相手に与える喜びこそが真の幸福であり、結果はそれに応じてついてくるものである、という信条なのでしょう。  ある本で「“儲”とは“信”用のある“者”と書く」と説明されていましたが、ビジネスとは自分の人間性を売る商売なのだと知らされました。同じお金を払うにしても、誠意の感じられる人には快く出せるものです。手練手管よりも大事なこと、それを「ご飯を大盛りにするオバチャン」という分かりやすいタイトルで説明されているのです。
「オバチャンの店に行くのは腹いっぱい食えるからや」と学生は言うかもしれないが、ほんとはみんな、オバチャンの気持ちが嬉しいのだ。  客は料理だけを食べているわけじゃない。店の人の気持ちも一緒に食べているのだ。  そしてどんなに頑張って美味しい料理を出そうとも、最後の勘定で納得させられなければ、すべては台無しになる。料理を売るのが料理屋の商売である以上、値段は店の良心そのものだからだ。
 そういう観点からすれば、今まで常識と思われていたことも、実は「失敗の常識」であると見えてくることも多いと思います。常識破れ、素人の起業家に案外成功例が多いのは、そのためでしょう。社会情勢や時代が変わっても不変なもの、それは心の温もりこそが人間が本来感ずる喜びだという、平凡で単純な真実ではないでしょうか。ならば、富や名声を求め、知識や経験をやみくもに増やすこと以上に重視すべきは、優しさや思いやり、弱者への配慮、誇りや信念といった、精神的財産を築き上げることではなかろうかと思います。もちろん、単なる「いい人」だけで人や金が集まって来る訳ではありませんが、人間としての基礎を無視して何かを得ようとしても、それは砂上の楼閣というものではないでしょうか。
(関連) ベンチャービジネスをたちあげようとしている医師のブログ。 教えて会計 (30代のニタが送る経理の島 ビジネス書の厳選情報を毎日お届け マインドマップ的読書感想文 2ちゃんねる@ニュー速VIPクオリティまとめブログ

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滝井秀典 ~ 1億円稼ぐ検索キーワードの見つけ方

「ノミはノミの糞をし、象は象の糞をする」という言葉があるように、お金を持たない私の財欲は可愛らしいもので、1億円よりも目の前の10万円の方が魅力的に映ります、、、( ̄。 ̄)  という訳で、この本を手にした動機も「1億円稼ぎたい」というよりも、検索キーワードの仕組みを知ろうと思ったからで、統計学的考察が面白かったです。実践的なことよりも理論を好むのは、理系の人間の悲しき性なのでしょうか。
 最近よく耳にするWeb 2.0ですが、現実世界の常識がいとも簡単に破られる……というか、現実の「あたりまえ」が通用しないのがネット空間なのだと思いました。
 たとえば、新聞や雑誌の広告では、商品によって反応は大きく変わるものなのでしょうが、キーワードマーケティングではクリック率10%、コンバージョン率1%はほぼ変わらないという事実があるようです。ただし、「キーワード広告で1位を表示し続ける」とか「検索キーワードが10万件以下のニッチキーワードである」などの条件下においてですが。では、なぜそのような現象が起きるのか?こう説明されています。
 つまりこういうことだ。  私たちがキーワードを検索エンジンで調べたときの広告が表示される条件は、どんなキーワードでもほとんど変わることがない。みな同じようなパソコンの画面の、同じようなインターネットブラウザを使い、同じような条件の検索結果を、みな同じように必ず1ページ目のどこかをクリックする。新聞広告のように、「スペースの大きさ」「色使い」などに人の反応率が左右されることは一切ない。だからどんなキーワードでもクリック率にほとんど差が出ないと考えられる。
うむ、なるほど、言われてみればその通り、納得です。
 また、インターネットは「べき法則」に従うという項目も興味深かったです。「べき法則」とは、正規分布の反対概念で、「少数のほんの上位が突出して数を稼ぎ、大多数の下位が少数を分け合う」現象と説明されていますが、物理的な制限のない、ものすごく数値の大きいものと最小単位のものが同時に存在する世界でこの法則性が生ずるようです。以下、本書の説明をまとめると、
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“人間の身体には物理的制限があるのでどんな巨大な男でも身長5mの人間はいない”し、“駅前商店街の集客数は、駅を利用する人数や駅前の店数に場所的な制限がある”から「べき法則」にはならない。つまり正規分布になる。
 一方、“プロゴルファーの賞金額が8桁だろうが20桁だろうが、誰も困ることはない”し、“言葉の種類がいくつあってもこの地球は存在できる”。こういう世界は、とんでもない差があるのに全く同じ世界に同時に存在することができる、すなわち「べき法則」が成り立つ。
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 とのことです。
 では、こういう世界で如何にビジネスを継続してゆくか?関心のある方は、ご一読あれ。なお、「おわりに」の中から、共感した以下の文章を引用させていただきます。
 多くの人が、「お金が足りない」と考えているようだ。しかし、私はあなたに尋ねてみたい。  あなたが、本当に失っているものは「誇り」ではないのか? (中略)悩める人を見つけ、その人を全力で助け、お礼にたくさんのお金をもらう。そのお金を使ってより多くの人を助けるために、自分自身の事業に再投資をはじめる。そして、次の助けを求める人を探しに新たな旅に出る。  それが商人だと、私は思う。  それが誇りある人生だと、私は信じる。
「金を使う人間になっても、金に使われる人間にはなるなよ」とはよく言われたものですが、失いたくないもの、それが「誇り」ですよね。
(関連) 滝井秀典 キーワードマーケティング・ブログ べき乗則とは パレートの法則(壱) パレートの法則(弐) ロングテール Zopeジャンキー日記

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