小川洋子 ~ 博士の愛した数式

博士の愛した数式
 先日、2007年度の本屋大賞が発表になりましたが、その第一回大賞受賞作品の『博士の愛した数式』読売文学賞も受賞しています。映画にもなりましたね。
 私は、物理・数学系が好きなので面白く読めましたが、数学が苦手な人にも人気があるようです。4~5人の小学生が電車の中で、切符の4桁の数字を、足したり引いたりして、決まった数にしようと遊んでいる、そんな感覚でしょうか。数学的ロマンを優しい文体で訴えられた感じです。理系の方なら、eπi が、指数関数三角関数を仲立ちとして、初めて結びついたときの感動を、改めてふり返ることが出来ると思います。
 この本に出てくる博士は、事故の後遺症で、1975年以降の記憶は80分しかもたないという設定ですが、惨めな感じはなく、ほのぼのと心温まる雰囲気になっています。家政婦である「私」の素朴さと、博士の持ち出す数学の話題に素直に引かれている息子√(ルート)の可愛らしさがそうさせるのだと思います。  また、江夏投手が今も現役として活躍中の博士の時間軸に、登場人物も読者も引き込まれ、軽くノスタルジックな気持ちにもさせられました。記憶が続かないというのはある意味で幸せなのかもしれない、と考えました。  その一方で、数学的知識は変わらず冴えている博士の姿に触れると、数理的真理に、永遠なる芸術的美を見出す人の気持ちが分かるような気がします。
見てご覧、この素晴らしい一続きの数字の連なりを。220の約数の和は284。284の約数の和は220。友愛数だ。
 こういう些細なことに喜びが持てなければ、数学とは無縁の人なのかもしれません。
 とりたてて大きな変化があるわけでもなく、最後はしんみりと終わるのですが、ホンワカとした何とも言い難い爽やかさが残る一冊でした。淡いタッチの水彩画のような美しさとでも言うのでしょうか。小川さんのアイデアに脱帽です。流行語のもとを生み出した藤原正彦さんと組んだのは正解でしたね。
 装丁のデザインも象徴的で良いと思います。

(参考) ぱんどら日記 きょうは思いつくままに気になったことを書いてみよう。 あるばむ だのん ミステリの部屋 Books Cinemas …That’s 園丁 本トノコト。 キョンの田舎日記 ベルの映画レビューの部屋 情報考学 Passion For The Future びぶりおふぃりあ 博士の愛した数式

Filed under: お:小川洋子  タグ: , , , , , , , , ,   charlie432 20:52  Comments (3)
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