福沢諭吉 / 学問のすすめ(まんがで読破)

まんがで読破シリーズ”の『学問のすすめ』は、本書の大半が「福沢諭吉物語」となっています。『学問のすすめ』の内容よりも、それを書くに至った福沢諭吉の精神がいかに培われていったかが良く分かる内容だと思います。
 1835年1月10日、福澤諭吉は大坂(現在の大阪)にて、学問好きの中津藩士・福沢百助(ひゃくすけ)の次男として生まれました。  諭吉の勉強は、出遅れたスタートでしたが、元々文才があり、ついには中津一の学力を身につけるようになります。しかし、下級武士の生まれの諭吉は上級武士に何かと差別され、身分制度に疑問を抱きはじめます(「門閥制度は親の敵(かたき)でござる『福翁自伝』)。
 嘉永6年(1853)、翌7年(1854)の2度のペリー来航など、激動の江戸。時代は開国攘夷か大きく揺れる中、緒方洪庵適塾で蘭学を、江戸で英語を学んだ諭吉は、1860年に咸臨丸で渡米。幕府遣欧使節や遣米使節にも随行しました。そこで触れた欧米の文明を、『西洋事情』『文明論之概略』などで著し、日本を近代的な文明国家に発展させるための啓蒙活動を行いました。『西洋事情』は全国で海賊版も含め25万部も売れ、驚異的なベストセラーとなり、日本の文明開化の流れを押し進めました。
 慶応4年(1868)、薩長の武力倒幕の気運が高まる中、15代将軍徳川慶喜は朝廷に政権を返上、とりあえず倒幕派との衝突をかわしたのですが……王政復古の大号令のもと、明治天皇は徳川を排除した倒幕派勢力で構成した新政府機関を樹立、将軍は「ただの人」となり、江戸城と領地の受け渡しを要求されます。慶喜は命令を拒否し、政権争奪の内戦が勃発しました。戊辰戦争です。  その中、諭吉は政府の要職につくことはなく言論・教育界で活躍し、自分の塾の名を「慶応義塾」と改名。これが今日の慶應義塾大学となりました。
『学問のすすめ』は明治5年(1872)~明治9年(1876)に書かれ、個人の独立、日本の文明化と独立を説いた17編で、海賊版も含め300万部刊行されたベストセラーです。
天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らずと云えり
 人は皆、平等であり、自由である。では、自由とは何か? 自由とは「独立できるということ」と諭吉は言います。
 独立者とは他人の考えに影響されず、自分で自体の正否を見わけ、自分の行動に間違いを起こさない人のことです。
 そして、独立者になるのに必要なものが学問だとして、まずは以下の実学を挙げています。
  • 読み書き
  • 計算
  • 地理
  • 歴史
  • 物理
  • 経済
  • 倫理
 実学とは、実生活に役立つ知識のことで、学問をするための手段であり、知識の応用と経験こそが学問だといいます。  そして、人間の持つ5つの要素、これらを自在に扱うことこそ、自己の独立と成功の秘訣としています。
  • 体の各機能は自然界に接し、自然物を利用し、狩猟や農耕を行う。体は自分の欲求を満たすために働く道具でもあります。
  • 知恵
    知恵は物事の道理を見極め、行動するときの目的を誤らないように創意工夫します。たとえば生産性の向上を考えて、畑仕事で肥料の量を調整する、機織り器の改良をする、などでしょう。
  • 情欲
    情欲は心身の働きを促進し、その情欲を満たすことで幸福感が得られます。人は皆、美味しいものを食べ、きれいな服を着たいと思います。人間は幸福感を得るために働くのです。
  • 誠実さ
    誠実さが情欲を抑え、情欲の限度を決めています。人の情欲はきりがなく、自分を通り越して他人まで及びがちです。自分の欲望が道理を飛び越さないように誠実さが働くのです。
  • 意志
    決断する力です。意志はことを行う決心を促します。人の行動は善も悪も、事を行うときの人間の意志によって行われます。人生の中で決断を迫られる場面は多いです。意志は鍛えておきましょう。
 それぞれの立場で、それ相応の才能や人格を身につけなければなりませんが、自分の理想を実現させるためには理想に見合う行動力が必要です。そして、自分の能力の自己点検、「人生の棚卸」が勧められます。
 自分を過大評価、過小評価してはいないか?  生まれてから今まで自分は何をしてきたのか?  これからどうすべきなのか?
 自己管理能力を身につけ、自分の計画性を向上させることが大事だと言われます。
 自分の見識を深める方法として、観察と推論が挙げられています。そして、誰かの受け売りではない自分の考えを作る。観察・推論・読書で知識を蓄積し、人と議論して情報交換し、見識を深める。正しいと思った考えは人前に立ち、発表する。こうして見識を深めれば、自ずと自己の判断力も高まります。そうやって、自分自身の品格を得て、独立者になり、多くの人たちから人望を得ることも大切なこととして説かれています。
 独立者は、社会全体の利益のために働くことが大切であり、社会貢献こそが、独立者の義務だとも主張しています。そして、活動の跡を人類の財産として、後の世まで伝えること、それが我々の責務だ、と勧められているのです。

    2012年2月
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