村上春樹 ~ 『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』

世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上)世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(下)
 村上春樹さんの作品は、かの有名な『ノルウェイの森』『1973年のピンボール』を読んだことがあるのですが、ハッキリってよく分かりませんでした。ノーベル賞受賞か?と騒がれたり、多くのファンがいるのは知っています。しかし、正直なところ、何が言いたいのか、何のために作品を書いているのか分からない、というのが村上春樹に対するイメージでした。とにかく、何が何を譬えているのかよく分からないのです。(ファンの方、ゴメンナサイ。私の読解力がないだけです。ただそれだけのことです)
 そのことを、ある先輩に言ったところ「そうか。じゃあ、これを読んでみたら?」と渡されたのが、この『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』だったのです。(ちなみに私が借りた本はこんな装丁です)
 いかにも村上春樹らしいタイトルだなあと読んでみると、いきなり、第1章から「面白い!」ではありませんか。え?何?良い意味で裏切られました。戸惑いさえ感じました。最初のうちは何が何だかよく分からないのですが、それでも面白いのです。グイグイ引き込まれました。これには驚きました。作品の面白さと同時に、自分が村上春樹を読めている事実が信じられませんでした。
 で、下巻の途中くらいまで読み進めると、それまでの謎がだんだん明らかにされ、推理小説で犯人が分かったような快感を味わうことが出来ます。「私」と「僕」との関係、「影」とは?「一角獣」とは?など、ハァ、良く練られているなあ、と関心しました。
 圧巻は、後半4分の1以降でした。最後、限られた時間での「私」の思考と、「僕」のとった行動に、“静かなる感情の高ぶり”とでもいうか、実に美しく崇高な感覚に包まれました。特に、
 私は声をあげて泣きたかったが、泣くわけにはいかなかった。涙を流すには私はもう年をとりすぎていたし、あまりに多くのことを経験しすぎていた。世界には涙を流すことのできない哀しみというのが存在するのだ。~
辺りからはグッと来るものがありました。そして最後の最後、
 降りしきる雪の中を一羽の白い鳥が南に向けて飛んでいくのが見えた。鳥は壁を越え、雪に包まれた南の空に呑みこまれていった。そのあとには僕が踏む雪の軋みだけが残った。
は、実に感動のエンディングだと思います。
 哲学的考察を、ミステリー、ファンタジー的な物語として表現した、村上春樹。この男はただ者ではない、と思わずにおれない1冊でした。未読の方は、是非ご一読を。
(参考) kakasiさんのブログ モコポコさんのブログ たなつねさんのブログ

Filed under: む:村上春樹  タグ: , , , , , ,   charlie432 20:01  Comments (6)
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