島尾敏雄 / 死の棘

夫の不倫を知った妻が、半狂乱で夫を責め、相手の女を呪う。 狂気の発作が激しくなる妻を恐れる夫は、許しを請い、妻の追及から逃れることを一心に願う。 「死んでやる!」「殺してくれ!!」「心中だ!」とやりあう両親を見て「オトウシャントオカアシャンケンカシテイル。カテイノジジョウシテ、オカアシャン、ナイテイル」と泣き叫ぶ子供。 嘘をつく夫と疑う妻の、子供まで巻き込む壮絶な闘いが克明に記され、夫婦のすれ違い、男女の業の違いをまざまざと見せつけられる思いがしました。 「夫婦喧嘩」という表現では生ぬるい、骨肉相食む争いが見えてくるような迫力に、ただただ圧倒される一冊です。 加えて、ひらがなが多く改行の少ない表記は、読了するのに体力と精神力を奪われました。 例えば、これは序の口。 (続きを読む…)

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筒井康隆 / 残像に口紅を

以前、「ステファノ・フォン・ロー / 小さい“つ”が消えた日(Die Geschichte vom kleinen Tsu)」を書いたときに、ミュジニーさんよりコメントにて教えていただいて読んだ本です。 『小さい“つ”が消えた日』は、文字通り促音を表す「っ」君が五十音村から消えて日本語が混乱する物語でしたが、この『残像に口紅を』は全ての音が最後に消えてしまうという、実験的な作品。アイディアとして考える人は他にもいたでしょうが、実際にこういう小説を書いてしまった、という事実にまず驚かされます。 タイトルは、言葉の消失と共に消えた娘にちなんでおり、早い段階で奥さんと3人の娘が消えています。主人公の佐治勝夫は、この小説の登場人物でもあり、また作者でもあります。
虚構内存在、つまり自分が小説の中の登場人物だということを意識している人物としての虚構内存在
(p.14)
を設定し、
感情移入の対象を、もはや動物だの無機物だのにとどめることなく、他ならぬ読者をその感情移入へと導くべき言語、その言語そのものに対して行う
(p.17)
と宣言して、
もしひとつの言語が消滅した時、惜しまれるのは言語かイメージか。つまりは言語そのものがこの世界から少しずつ消えていくというテーマの虚構
(p.18)
に挑戦した小説。 1章ごとにどんどん音が消失してゆくので、話の内容そのものよりも、制限が増えることにより、文章がどう変わってゆくか、を気にしながら読み進めて行きましたが、かなり後半になるまで、全然違和感なく読めてしまうのに、また驚きました。 (続きを読む…)

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とどろき / 平成21年4月号 – 親のご恩のお話 ~ 為造悪業の恩

仏説父母恩重難報経』には、親の大恩を次のように十種に分けて教えられ、
  1. 懐胎守護の恩
  2. 臨生受苦の恩
  3. 生子忘憂の恩
  4. 乳哺養育の恩
  5. 廻乾就湿の恩
  6. 洗潅不浄の恩
  7. 嚥苦吐甘の恩
  8. 為造悪業の恩
  9. 遠行憶念の恩
  10. 究竟憐愍の恩
その中の、「為造悪業の恩」について、
「若しそれ子のために止むを得ざる事あれば、自ら悪業を造りて悪趣に堕つることを甘んず」
と説かれています。 子どものためなら、自分に悪果が来るのを厭わず悪事を犯してしまう恩。また、時には、正邪の判断を見失ってしまう親心。 そういう親の恩を忘れずに、正しい道を進ませていただきたいと思わずにおれません。 (続きを読む…)

Filed under: ★雑誌  タグ: , , , , ,   charlie432 00:00  Comments (0)
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