ハイドンとベートーヴェン

 ハイドンって、何か「いい人」というイメージがあって好きですね。「巨匠」であると同時に「パパ」ハイドンです。
 音楽的には、同時代のモーツァルトやベートーヴェンに比べ地味な印象を受けますが、本当は良い曲はたくさんあります。モーツァルトはハイドンに弦楽四重奏曲を献呈しているほどですから、多大な影響を与えていたことが分かります。→ ハイドンセット
 そんなハイドン、村上春樹『海辺のカフカ』のベートーヴェンの記述の中で、このように描かれています。
 星野さんはうなずいて、またベートーヴェンの伝記に戻っていった。ベートーヴェンは誇りが高く、自分の才能に対して絶対的な自信を持ち、貴族階級には一切おもねらなかった。芸術こそが、情念の正しき発露こそが、この世界でもっとも崇高なものであり、敬意を払われるべきものであり、権力や財産はそれに奉仕するものだと考えていた。ハイドンは、貴族の家に寄宿しているときは(だいたいにおいて寄宿していた)、召使いたちと一緒に食事をとった。音楽家たちはハイドンの生きていた時代には、使用人の階層に属していたのだ(もっとも気さくで人の好(よ)いハイドンは、貴族と堅苦しい食事をするよりは、使用人たちと食事をともにする方を好んだが)。  しかしベートーヴェンはそんな侮辱的な目にあわされると激怒し、ものを壁に投げつけ、貴族とともに対等にテーブルに就くことを主張した。ベートーヴェンは気が短く(ほとんど癇癪持ちだった)、いったん怒り出すと手がつけられなかった。政治的にもラディカルな考えを持っていたし、それを隠そうともしなかった。耳が遠くなると、そのような気性のきつさはますます強くなっていった。彼の音楽は歳をとるとともに、飛躍的に広がりを増し、それと同時に稠密(ちゅうみつ)に内部に集中していった。そんな背反的なことを同時にやれるのはベートーヴェンくらいだった。しかしそのような人並みではない作業は、彼の現実の人生をどんどん破壊していった。人の肉体や精神はあくまで限りのあるものであり、そんな激務に耐えられるように作られてはいないのだ。
(第40章より)
 芸術こそが、情念の正しき発露こそが、この世界でもっとも崇高なものであり、敬意を払われるべきものであり、権力や財産はそれに奉仕するものと考えたベートーヴェン。ロッカーみたいでかっこいいですが、貴族と堅苦しい食事をするよりは、使用人たちと食事をともにする方を好んだ人の好いハイドンも魅力的です。お茶目な人だったのでしょう。交響曲で、寝ている人を起こすイタズラを仕掛けているという逸話がありますが、曲そのものがほのぼのと、可愛らしいです(^o^)→ 交響曲第94番
交響曲第94番 第2楽章

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ハイドン ~ 交響曲「奇跡」、協奏交響曲

 ハイドンの時代には指揮台がなく、チェンバロを弾きながらの指揮だったため、1階からはハイドンの姿があまり見えなかったようです。そこで、この曲の初演時、観客は皆、ハイドンの姿を一目見ようとステージ前に殺到!「ああ、そんなことしたら、けが人が出ちゃうよ!」と思っていたら後方から「ガチャーン!!」巨大なシャンデリアが落下したのでした。ところが、皆前方に移動していた為、けが人は一人も出なかったとのことです。そこで皆が口を揃えて「奇跡だ!」「奇跡だ!」と叫びましたとさ。まる。
 これが有名な「奇跡」の名前の由来ですが、実は近年の研究により、それは96番ではなく102番だったとか。あるいはシャンデリア事件そのものもなかったという説もあるようです。まあ、真意の程は別として、それだけ当時ハイドンは人気があったということですね。確かに96番も102番も大衆受けしそうな親しみやすい曲だと思います。
 協奏交響曲 変ロ長調は、オーボエとファゴットの音が好きで、お気に入りの曲でしたが、交響曲の第105番と位置づけられていると始めて知りました。協奏交響というジャンル自体が交響曲の中に含まれるようですが、この曲は3楽章形式、独奏楽器の使い方からして協奏曲に近いですね。木管楽器と弦楽器のハモリは聴いていて気持ちが良いものです。また、第1楽章始めのメロディは清々しくて爽やかな気分になります。
TRACK LIST:
交響曲第96番 ニ長調 Hob.I:96 《奇跡》 (1) 1. Adagio – Allegro (2) 2. Andante (3) 3. Menuetto. Allegretto – Trio – Menuetto (4) 4. Finale. Vivace (assai)
協奏交響曲 変ロ長調 Hob.I:105 (5) 1. Allegro (6) 2. Andante (7) 3. Allegro con spirito

マリエッケ・ブランケンステイン(ヴァイオリン) ウィリアム・コーンウェイ(チェロ) ダグラス・ボイド(オーボエ) マセウ・ウィルキー(ファゴット)
ヨーロッパ室内管弦楽団 指揮:クラウディオ・アバド


(追記・お詫び・お願い)  上の文章からは、交響曲第96番にはチェンバロも入っているように読めますが、調べてみると、この曲の楽器編成は Fl:2; Ob:2; Fg:2; Hr:2; Tp:2; Timp; Str となっています。また、hr musik(ヘッセン放送製作CD)の上から1/3ほどのところに(「チェンバロ」でページ内検索してみてください)「さらにはチェンバロを全編に加え」とあるので、初演時にチェンバロが含まれていたか、分からなくなりました。  どなたか、ハッキリ分かられる方、教えていただければ有難く思います。 m(_ _)m

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ハイドン ~ 交響曲「軍隊」「時計」「ロンドン」

 数あるハイドンの交響曲の中で、とりわけ有名な曲が3曲収録された1枚です。「軍隊」「時計」も第2楽章からつけられた名前ですが、私はむしろ第1楽章の荘厳な序奏と、それに続く軽快かつ流麗なメロディへの流れ、そして雄大な第4楽章が好きですね。 「ロンドン」については4つの楽章すべてが素晴らしいです。ハイドンの全交響曲を総括するような、最も優れた曲ではないかと思います。
 18世紀の当時、60前後のハイドンが、ウィーンからドーバー海峡を渡ってイギリスへ行くというのは大冒険だったようで、モーツァルトからは大変反対されたそうです。しかし、ヴァイオリニスト・ザロモンの招きによる2度のロンドン訪問中に書いた「ザロモンセット」は200年の時を超え、ハイドンの名声を確固たるものとする傑作ぞろいです。まさに「円熟」という表現がぴったりの交響曲群ではないでしょうか。環境の変化、聴衆の期待が如何にミュージシャンの創作意欲を刺激するか、知らされる一件だと思います。
 なお、皮肉なことに、ハイドンの老体を案じ、ロンドン行きを反対していたモーツァルトですが、意気揚々と凱旋帰国するハイドンを待たずして、35歳の若さで他界しています。「老少不定」とはいいながら、ハイドンとしてはなんともやり切れない思いだったのではないでしょうか。
TRACK LIST:
交響曲 第100番 ト長調“軍隊”Hob.I-100 1. 1st Movement 2. 2nd Movement 3. 3rd Movement 4. 4th Movement
交響曲 第101番 ニ長調“時計”Hob.I-101 5. 1st Movement 6. 2nd Movement 7. 3rd Movement 8. 4th Movement
交響曲 第104番 ニ長調“ロンドン”Hob.I-104 9. 1st Movement 10. 2nd Movement 11. 3rd Movement 12. 4th Movement

ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 指揮:サー・トーマス・ビーチャム

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