THE SHAWSHANK REDEMPTION (ショーシャンクの空に)

【ネタバレ対策】  知人から指摘を受けましたので、あらすじが分かってしまう決定的な表現は隠しておきました。マウスでドラックして、文字色を反転させると見ることができます。
 いくら映画に疎いといっても、名前とあらすじだけは知っていた『ショーシャンクの空に』。DVDのレンタルでようやく見ることが出来ました。多くの方が称賛するように、感動のラストは清清しい気持ちよさでした。また、主人公アンディの脱獄成功に至る巧みなトリックにも感嘆しました。
「友情」とか「良心」、「善悪」や「正義」、あるいは「初志貫徹」・「信念」など、様々に考えさせられましたが、最大のテーマは「希望」でしょうか。逞しく生きる力ははどこから出てくるのか、静かながら力強く訴える作品だと思います。
 50年間の刑務所暮らしから仮釈放された年老いたブルックス、彼は環境の急激な変化に戸惑いを感じます。
強盗でもやって刑務所へ戻りたい。店長を撃てば必ず刑務所送りだ。だがこの年で強盗はできない。疲れ果てた。不安から開放されたい。だから死ぬことにした。
 自由を得られたと思っても不安はなくならない、皮肉な人生の悲劇に人間の幸福とは如何なるものか、考えずにおれませんでした。
 40年ぶりに外の世界に出たレッドも然り、
仮釈放が取り消しになれば、刑務所へ戻れる。毎日が恐ろしい。安心できる所へ行きたい。おびえなくて済む所へ……
とブルックスと同じ心境を吐露しています。かつての「(刑務所の塀を)最初は憎み、しだいに慣れ、長い年月の間に頼るようになる。“施設なれ”さ。終身刑は人を廃人にする刑罰だ。陰湿な方法で」という、自分の言葉通りになってしまうのです。
 しかし彼は自殺をしなかった、それはなぜか、アンディから希望を与えられていたからです。希望の有無が、ブルックスとレッドの人生を180度変えたのです。
必死に生きるか、必死に死ぬか。俺は生きるぞ。
劇的な脱獄のシーンよりも、静かなこのエンディングこそがこの映画の最大の見せ場だと思いました。
 考えてみれば、冤罪で拘束されている囚人に限らず、全ての人は例外なく、何かに「束縛」されていると言えるでしょう。会社や学校、またある種の組織や団体、チームに所属している人が、自分勝手な行動をとれば、そこに何らかの波風がたちます。家族や、親しい友人という単位においても、最低限の暗黙のルールは存在します。怪我や老いによって体がうまく動かないとき、文字通り「不自由」な思いをします。  そこに、理不尽なもの、あるいは居心地の悪さを感じたとき、その不自由さこそが今の自分を苦しめている最大の原因だと思ってしまいますが、果たしてそれが苦悩の根源と言えるものなのでしょうか。
 ニーチェ『道徳の系譜』なぜ生きるかがわかれば、ひとは苦悩すら探し求めると言っているのは、人生の希望を見失わずにいれば、どんな苦しみをも乗り越えられる、ということでしょうか。そういう点でこの『ショーシャンクの空に』で訴えられているメッセージと共通するかもしれません。

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麻生太郎 / とてつもない日本

 日本人が日本を語るとき、得てして自虐的なものになりがちですが、『国家の品格』のベストセラーが象徴するように、最近は「もっと日本を見直そう」という風潮になっているのでしょうか。知人に薦められるままに読んだこの『とてつもない日本』は、思いのほか面白かったというのが率直な感想です。  格差社会、少子化問題、学校崩壊……など、暗い面が取り沙汰されることの多い日本に対し、
「ちょっと待っていただきたい。日本は本当にそんなに「駄目な国」なのだろうか。そんなにお先真っ暗なのだろうか」
と問題を投げかけています。決して「反論のための反論」ではなく、具体的な事例を根拠に挙げて、分かりやすい文章で書かれているので素直に読めました。多くの人が漠然と考えているだろうことを、改めて文章で読ませてもらった、という感じです。
 中でも「なるほど」と思ったのが「第二章 日本の底力」「第三章 高齢化を讃える」の章でした。
「ニートも、捨てたもんじゃない」「若者のソフトパワー」
と逆説的な論旨を展開したり、
「「悠々自適」なんて言えるカネのある老人には、しこたまカネを使っていただけばよい。元気のある老人には大いに働いてもらって、活力ある高齢化社会を作っていけばいい。そして、何度も言うけれも、本当に恵まれない人たちは、国が責任を持って支えていく。子供に「いろんな生きかたがある」と教えているのならば、大人も老人も、多様な生き方を示せばいいのである」
と主張するあたりには好感が持てました。平成18年の自由民主党総裁選挙立候補時の遊説で多くの人と接した経験から出た意見なのではないかと思います。麻生さん自身の「私は劣等生だった」との告白も、失礼ながら納得のゆくところです。
 後半は、眼は日本だけでなくアジア全体に向けられます。
「クアラルンプールの少女、北京の少年、ハノイの中学生やジャカルタの高校生は、もはやアイドルを、ハリウッドのつくる銀幕だけに求めはしない。新しいファッションのインスピレーションを、パリにだけ求めようとはしなくなった。日本でも、もっぱらブロンドの美男子に夢中になっていた女性が、隣国のスターに金切り声を上げるようになった。それ以前から香港、中国のスターも人気を呼んだ」
などの記述を読むと、心が明るくなります。もちろん、抱えている問題の多さを考えると、楽観視ばかりは出来ないのが現実でしょうが、こういう前向きな姿勢は好きですね。
 以下私見ですが、とてつもない日本のエネルギーは、聖徳太子以降、引き継がれてきた仏教的思想によるものが大きいと思います。和する心や無常を観ずる心、礼儀や思いやりを重んじる習慣、自利利他の精神などは、もっと評価されるべきなのではないでしょうか。最近では多くの西洋人も仏教に関心を持ち始めているようですが、アインシュタインハイデッガーなどの識者はすでにその必要性を主張していたと聞きます。 (続きを読む…)

Filed under: ★新書・単行本など  タグ: , , , , , , , , ,   charlie432 00:00  Comments (0)

ドストエフスキー ~ カラマーゾフの兄弟(第1部~第3部)

 6月20日(水)19時からNHK教育の『地球ドラマチック』という番組を、冒頭2分ほど(^_^;)見ました。うろ覚えですが、こんな内容でした。
 これまで出版された、あらゆる本を分析して、ベストセラーとなり得る条件を入力し、コンピューターに本を書かせてみた。その結果出て来た文章はこのように始まるものだった──女王様が言った。「神様!教えてください!私をレイプした本当の犯人を!」
 なるほど、文学と言っても、所詮は色と欲にまみれた、罪深い人間の本性を暴いたものがほとんどで、多くの読者が求めているものも、そういった類なのかと納得してしまいました。というのも、ちょうど今、通勤中に睡魔と闘いながら少しずつ読み進めている『カラマーゾフの兄弟』が、まさにそんな内容で、しかもそれが「世界文学の最高峰」と絶賛されているからです。宗教的、崇高な心を求め、少しでも神のような存在に近づきたいと願いながらも、実態は自分でも呆れるほど低俗で、愚かな存在が人間の偽らざる姿なのだろうと思いました。
 本書に出てくるヒョードル・カラマーゾフは、光文社新古典文庫のしおりによると“無一文から身を起こし、一財産を築いた。無類の悪党にして道化、女好き”、長男ドミートリー・カラマーゾフ“放蕩の限りをつくす激しい性格だが、高貴な心をあわせもつ”人間として描かれています。預かった金を一気に使い果たし、わが身の面目のために金集めに東奔西走、ようやく手にした3000ルーブルも、またパーッと使ってしまう、そんなドミートリーはいわゆるダメ男の典型と思わずにおれません(あ、でも、学生時代、試験前なのに勉強せず、試験中に居眠りをして、終了直前に慌てふためいた経験のある者は、同類ですね)。そして、そんな男を次第に愛するようになるグルーシェニカ。まるでだめんず・うぉ~か~のようですが、これが、昔も今も変わらない人間の姿なのでしょう。
 一方、“誰からも愛される清純な青年”で主人公と思われるアリョーシャ“慈愛にみちた高徳の人物で信者の尊敬を一身に集める”ゾシマ長老が出てくる場面では、「人間の心にも美しいものがあるのではないか」と思わされますが、有名な大審問官や、長老の遺体が悪臭を放ち、信者の信仰が動揺する場面では、「信仰」とは一体何かと考えさせられました。遠藤周作の『沈黙』に通ずるものがあります。
 当初は1巻ずつ感想をアップしていこうと思ったのですが、何せ全体のストーリーを的確に理解するだけの読解力がない為に、何も書けないまま3巻目後半まで来てしまいました。ヒョードルが何者かに殺害され、怨恨関係にあったドミートリーが嫌疑にかけられるようになり、ようやく本格的に面白いと感じるようになりました。実は、あるきっかけで真犯人を知ってしまったのですが、それでも先を読みたい、いや、なおさら続きが読みたくなりました。  恐らく、3巻を読み終える頃には亀山訳の第4巻が発売されるでしょう。
(関連) 古典 新訳 群衆 浮遊図書館(別館) 『カラマーゾフの兄弟』について 大審問官を読もう!

    2012年5月
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