小菅正夫 / 「旭山動物園」革命―夢を実現した復活プロジェクト

 夏は30℃を軽く超える日がある一方で、真冬には、寒波と大雪に見舞われ、氷点下25℃を下回る日がある、という北海道旭川市にある旭山動物園。日本で最北に位置し、一年の半分近くを雪に閉ざされ、交通のアクセスもけっして良いとはいえない条件にあります。しかも、パンダのような「珍獣」もなく、150種近い動物はいるものの、どこの動物園でも見られる動物がほとんどですが、上野動物園の月間入園者数を越える月があり、「日本一の動物園」と言われるまで成長するようになりました。
 立地条件が悪く、予算もないなか、一体どうしてここまで人気の動物園になったのか。そこにはいわゆる「秘策」というものがあるのではなく、地道な勉強会と動物に対する愛情から出た結果でありました。
 
動物園閉鎖の危機  今の展示の仕方は、一朝一夕にできたわけではない。
(中略)
 気がつくと、われわれの動物園は、「全国動物園、古い施設ランキング」がもしあったとしたらトップクラスに位置するほどの状態になっていた。  それでも予算がつかないのだから仕方がない。かといって何もしないでいると、お客さんは減る一方だ。  このままじゃ、悔しい。  お金がなくても、できることがあるはずだ、できることから始めようと考えた。
(中略)
 まず、「動物園とは何をするところなのか」といった動物園の存在意義の確認から始めた。
動物園の4つの役割  動物園というのはレクリエーション、つまり娯楽施設だと思っている人が多いだろう。しかし、(中略)要点だけを紹介すると……、 「動物たちと一緒の楽しい時間をすごし、その中で動物たちの素晴らしさを感じてもらい、それがきっかけとなって、『動物達を保護したい』、あるいは『動物の生きる地球環境を守るためには、何をすべきなのか』などを考える意識を育てる。また、動物園は、『希少動物の保護・繁殖』に関わり、さらには、野生動物医学など、『学術研究の場』でもある」  ということになる。  整理すれば、「レクリエーションの場」「教育の場」「自然保護の場」「調査・研究の場」の4つの役割がある。
 こうした「動物園に携わる者としての基本スタンス」に立った、本当の動物の姿をありのままに見せるという「見せ方」の工夫の上に成り立っているのが現在の旭山動物園です。
 人間でも、自分が誰にも負けない能力を発揮できる場を与えられて、それを人に評価されれば、そんな嬉しいことはないだろう。勉強でも、運動でも、仕事でも、もっとやろう、もっと上手くなりたいと思ってますます能力を高めていくだろうし、イキイキしてくるはずである。  動物も同じだと思う。他の動物にはない、自分だけが持つ能力を発揮できる環境を提供されたいのだ。
 各動物の特徴を知り、動物の立場に立ち、動物に教えられながら、旭山動物園には、他には見られない独自の「見せ方」が生まれました。
・アザラシが泳ぐ円柱トンネル ・オランウータンの空中運動場 ・ペンギンの散歩 ・ホッキョクグマのダイビング ・ゾウとペリカン、キリンとホロホロチョウ、クモザルとカピバラの「棲み分け」 ・さる山の立体展示 ・ヒョウやライオンの「寝ている姿」の展示 等々
 さらに、動物の「命」を伝えるために、彼らの「死」からも目をそらさず伝えているのもユニークなところです。
 不利な条件、逆境を「出来ない理由」とするのではなく、前向きで建設的な考え方で克服しようとする園長の姿勢に、非常に見習うところがあると思わされた一冊でした。  そして、動物と人間を、対等な目線で見つめているところから出る発想が多いのだと思いました。これは、人間対人間でも応用できるものの見方ではないでしょうか。
 最後に、「あとがき」の以下の一節が心に残りました。
 いまの動物園づくりの根本にあるのは、住職から言われた言葉(「地獄とは、やりたいことができないことだ」:引用者注)だったかもしれない。動物も人間も、やりたいことができなければ幸せではない。だから、それぞれの動物のいちばんかっこいいところは、彼らがやりたいことをやっている瞬間である。それをお客さんに見せたかった。これからも、動物たちのイキイキとした姿に感動していただけるような動物園にしていきたい。



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山崎豊子~華麗なる一族(上)

華麗なる一族(上)
 中学生のとき、古文の先生に紹介されて読んだのが山崎豊子さんの『白い巨塔』でした。医学界の裏事情を通し、人間の本性を暴いた作品に、驚いたのを覚えています。しかし、「じゃあ、もういっちょ、山崎豊子の作品を」と『華麗なる一族』を買ったところまでは覚えているのですが、その後は記憶にございません。 (-_-;ゞ  この作品は、政界、財界、大企業のトップが舞台なので、中学生の私には難しすぎたのでしょう。
 それから約20年……
 相変わらず、政界、財界の話題は苦手なのですが、テレビドラマ化したことと、会社の先輩から勧められたことをきっかけに、再び読んでいます。実は、まだ上巻(新潮文庫)も読み終えていないのですが、長いので、忘れないうちに何か書いておこうと思って、今回取り上げました。
 まず、前半は人物のキャラクター作りにページを費やしていますね。登場人物が多いわりに「鉄平」「銀平」「一子」「二子」「三子」などと名前が分かりやすく、有り難いです。  一族の長である万俵大介公卿出身で内気な妻・寧子熱血漢の長男・鉄平、ニヒルな次男・銀平、家庭教師でありながら妻以上の存在感の高須相子など、各人の個性をじっくりと読者に植え付けながら話が進められてゆきます。
 いよいよ4章あたりから、高炉建設の是非をめぐり、親子の確執が生じ、面白くなってきました。鉄平出生の謎もちらほらと伏線が張られています。また、相子のしきる閨閥の行方は……など、最後まで読まずにおれなくなりますね。
 一足先に読み終わった先輩によると「相子ムカツク!」ということですが、今のところまだそうは思いません。どちらかというと「寧子は気の毒に」という感じでしょうか。『白夜行』の雪穂に対してもあまり悪い印象を受けなかったのです(魅力すら感じてしまいました)が、私は悪女に操られやすいタイプなのかも、と思ってします。気をつけねば。
 ちなみに、ドラマは初回を見逃したので見ていません。再放送があったら見てみたいと思います。木村拓哉さんが鉄平を演じているようですが、イメージとしては銀平の方がピタッとくるのですが……。


(参考) http://www.tbs.co.jp/karei2007/ 虎ノ門ではたらく社長のblog どらま・のーと 雪斎の随想録

Filed under: や:山崎豊子  タグ: , , , , , , ,   charlie432 20:30  Comments (0)
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