山崎豊子 ~ 華麗なる一族(下)

華麗なる一族(下)
「ああ、燃えている、燃えている、大の字が!」
 大文字の送り火を見ながら、阪神銀行頭取の万俵大介と、大同銀行の専務・綿貫千太郎との懇談から始まるこの下巻、出だしから大介のワルぶりが見事に表現されており、読み進めるにつれ、先の展開に目が離せなくなります。それまでの上・中巻をはるかに上回る面白さだと思います。「早くもクライマックスか」と思うところが何度もありました。
 それにしても、大介は『白い巨塔』財前よりも悪党だと思わずにおれません。しかも、こんな狡猾な男が実在しそうなリアリティをもって迫ってくるので、大変読みごたえがありました。「まるで○○さんみたいだ」と思わせる一幕も…… (-_-;
 圧巻は本の半ば以降で、最後まで読み終えると、それまでの内容が終章へのプロローグに過ぎなかったと思える程、山崎豊子さんの描く壮大な世界に、ただただ息を呑むばかりです。「主人公は大介であり、“華麗なる一族”だったんですね」とスッキリしました。「一度は読んでおきたい本」として自信を持って薦められる本だと思います。
我利我利ではいけない」と言われるように、他人を蹴落としたり、欺瞞に満ちた生活を送っていて、人は幸福になれないのだと痛感します。また、いかに熱意があっても状況判断や未来への見通しの甘さがあっては、これまた大失敗につながる、という教訓にもなりました。そういう意味で、この本の結末は抵抗なく受入れられます。
 ただ一つだけ苦言を呈すると、鉄平が最後に取った行動に至るまでの、心理描写をもっと詳しく読みたかった、という気はします。どうしてあのようなことをしたのか、分かるのですが、深く掘り下げてもらいたかったです。
 それはさておき、今から30年前以上前に書かれたとは思えない傑作だと思います。人間の実態を明らかにとらえ、今も昔も変わらぬ、幸福になりえない人間社会の構図が浮き彫りにされています。そして今もなお、それが繰り返されている現実に、驚かされます。
 ネタバレする恐れがあるのであらすじが書けないのが残念です。ちなみに、新潮文庫の裏表紙にはかなり重要なことが書いてあるので、ドラマを見逃された方、未読の方は書店のカバーで隠して、最後まで読まないことをオススメします。



(参考) 宇宙 世田谷 emam PLUS+NEKO 自己満の読書日記 人生はタイトロープ スマートライフ・プロジェクト ~東京SE日記~ てれすこ日記

Filed under: や:山崎豊子  タグ: , , , , , , ,   charlie432 20:22  Comments (3)

山崎豊子 ~ 華麗なる一族(中)

華麗なる一族(中)
 人生の苦しみの大半は人間関係に起因する、と聞いたことがあります。複雑な人間関係のしがらみをいかに乗り越えるか……怒りの心を押し殺して笑って握手したり、腹のさぐりあいをして、したたかに生きて行かねばならない世知辛い世の中は、今も昔も変わらないのでしょう。今読んでも非常にリアリティ迫るこの山崎豊子さんの作品、発表されたのは1973ということですから驚きです。木村拓哉さん主演、ということを抜きにしても、ドラマの視聴率の高さには目を見張るものがあります。いかに人間の変わらぬ本質を鋭くえぐりだした傑作かが分かります。それと、「取材と金融の基礎勉強に半年余りも費やし、小説以前の作業にこんなに時間を費やしていいものか」の著者の言葉を知るまでもなく、取材量の豊富さには驚かされます。
 中巻では、万俵家の長・大介と長男の鉄平との軋轢、鉄平の経営する阪神特殊鋼の低迷、その社員・一之瀬四々彦に思いを寄せつつも、大介の愛人・高須相子の計略により総理の縁戚と見合いをさせられる次女・二子など……、ドロドロした人間関係が展開してゆきます。そして、最後読み終わった時は、否応なしに読者を下巻へ誘う驚きの展開……と読みどころ満載です。
 人の幸・不幸は何によって決まるのか、正直者は馬鹿を見てしまうのか、善とは?悪とは?と考えずにおれませんでした。

(参考) ひろみきたけさんのブログ 華麗なる一族 DVD-BOX やまとよさんのブログ ichigoさんのブログ cahoさんのブログ 三省堂書店 町田店さんのブログ 雪斎の随想録 pj さんのブログ tadaohさんのブログ テレビドラマ 2007年 テレビドラマ 1974年 (監督)山本薩夫・(製作)1974年 2007年1月期 連続ドラマ平均視聴率ランキング

Filed under: や:山崎豊子  タグ: , , , , , ,   charlie432 12:55  Comments (1)

山崎豊子~華麗なる一族(上)

華麗なる一族(上)
 中学生のとき、古文の先生に紹介されて読んだのが山崎豊子さんの『白い巨塔』でした。医学界の裏事情を通し、人間の本性を暴いた作品に、驚いたのを覚えています。しかし、「じゃあ、もういっちょ、山崎豊子の作品を」と『華麗なる一族』を買ったところまでは覚えているのですが、その後は記憶にございません。 (-_-;ゞ  この作品は、政界、財界、大企業のトップが舞台なので、中学生の私には難しすぎたのでしょう。
 それから約20年……
 相変わらず、政界、財界の話題は苦手なのですが、テレビドラマ化したことと、会社の先輩から勧められたことをきっかけに、再び読んでいます。実は、まだ上巻(新潮文庫)も読み終えていないのですが、長いので、忘れないうちに何か書いておこうと思って、今回取り上げました。
 まず、前半は人物のキャラクター作りにページを費やしていますね。登場人物が多いわりに「鉄平」「銀平」「一子」「二子」「三子」などと名前が分かりやすく、有り難いです。  一族の長である万俵大介公卿出身で内気な妻・寧子熱血漢の長男・鉄平、ニヒルな次男・銀平、家庭教師でありながら妻以上の存在感の高須相子など、各人の個性をじっくりと読者に植え付けながら話が進められてゆきます。
 いよいよ4章あたりから、高炉建設の是非をめぐり、親子の確執が生じ、面白くなってきました。鉄平出生の謎もちらほらと伏線が張られています。また、相子のしきる閨閥の行方は……など、最後まで読まずにおれなくなりますね。
 一足先に読み終わった先輩によると「相子ムカツク!」ということですが、今のところまだそうは思いません。どちらかというと「寧子は気の毒に」という感じでしょうか。『白夜行』の雪穂に対してもあまり悪い印象を受けなかったのです(魅力すら感じてしまいました)が、私は悪女に操られやすいタイプなのかも、と思ってします。気をつけねば。
 ちなみに、ドラマは初回を見逃したので見ていません。再放送があったら見てみたいと思います。木村拓哉さんが鉄平を演じているようですが、イメージとしては銀平の方がピタッとくるのですが……。


(参考) http://www.tbs.co.jp/karei2007/ 虎ノ門ではたらく社長のblog どらま・のーと 雪斎の随想録

Filed under: や:山崎豊子  タグ: , , , , , , ,   charlie432 20:30  Comments (0)
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