日曜洋画劇場 40周年記念 淀川長治の名画解説

 お恥ずかしい話、昨年までテレビとか映画とか、ほとんど見てきませんでした。だから分からないところも多々ありました。 (^^;ゞ  しかし、「この映画、観てみたいな」と思わせる淀川さんの語り、人柄は魅力的でした。この方は本当に映画を愛しておられたのだな、ということが伝わってきます。  平成10年11月10日収録の、“最後の解説”では「ハイッ、皆さん、こんばんは。ちょっとねぇ、喉がかれてますの。ごめんなさい。聞こえますか?あなた、あなた?……分かりましたね。という訳で、今日は、こんな体の具合で、本当に申し訳ございません[emoji:e-448]」と声を枯らしながら、「この映画の良さを分かって欲しい」の一心で、一貫して変わらぬ個性的な語り口、矍鑠(かくしゃく)とした語勢で解説される姿に、胸が熱くなりました。内容以前に、淀川さんの映画魂に感動しました。この回が最後の「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」か、と思うと寂しさを感じずにおれませんでした。  50タイトルは全て有名な作品ですので、少しずつ観てゆきたいと思います。
 脚本、美術、音楽、カメラワーク、照明、音響や映像の効果、出演者の演技……。文化活動のあらゆる分野が収まった総合芸術が映画だと思います。良い作品に触れることは、良書を読むのと同様、その人の心の成長には是非とも必要なことだと、今更ながら思うようになりました。
 そんな訳で、【目標】のところにも書きましたが、今後、出来るだけ映画鑑賞をしてゆきたいと思います。呼び捨てや「淀川さん」ではなく、「淀川先生」と自然に言えるようになりたいです。

Links: 淀川長治 淀川長治のカミングアウト 淀川長治の新シネマトーク あの人の人生を知ろう ~ 淀川 長治

【タイトルライナップ】

50タイトル紹介
(1)荒野の用心棒 (2)史上最大の作戦 (3)燃えよドラゴン (4)ローマの休日 (5)旅情 (6)ダーティハリー (7)サイコ (8)激突! (9)ミクロの決死圏 (10)ハリーとトント (11)オリエント急行殺人事件 (12)暗くなるまで待って (13)戦争と平和 (14)アラビアのロレンス (15)王子と踊子 (16)サタデー・ナイト・フィーバー (17)ベン・ハー (18)2001年宇宙の旅 (19)シェーン (20)エデンの東 (21)俺たちに明日はない (22)ファール・プレイ (23)がんばれ!ベアーズ (24)ゲッタウェイ (25)ある愛の詩 (26)アメリカン・グラフィティ (27)天国から来たチャンピオン (28)スーパーマン (29)ゴッドファーザーPARTⅡ (30)JAWS・ジョーズ (31)戦場のメリークリスマス (32)普通の人々 (33)タワーリング・インフェルノ (34)アマデウス (35)めまい (36)キングコング (37)プロジェクトA (38)ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ (39)ゴーストバスターズ (40)007/ネバーセイ・ネバーアゲイン (41)スター・ウォーズ ジェダイの復讐 (42)刑事ジョン・ブック 目撃者 (43)ダイ・ハード (44)ターミネーター (45)スティング (46)バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2 (47)羊たちの沈黙 (48)逃亡者 (49)シザーハンズ (50)レイダース 失われたアーク

特典
(特典1)現存する最も古い解説      「大いなる西部」 (特典2)最後に収録された解説      「ラストマン・スタンディング」

こうの史代 ~ 夕凪の街 桜の国

 仕事の関係で、広島に半年ほどいた頃がありますが、そのとき知り合ったおばあちゃんのSさん。被爆者健康手帳を持ち歩き、華奢なお体ながらも明るく前向きな性格に、大変心を動かされたことがあります。しかし被爆時のお話を聞かせて頂くと、如何に悲惨な状況が当時繰り広げられていたかが知らされ、まるで現実とは違った世界がそこにあったかのような感覚になります。
 先日、ある人の勧めで『NHKスペシャル』の「核クライシス」(第1回第2回)を見ました。核兵器の、物質的破壊力に戦慄を覚えましたが、それとは対照的に心理的・精神的側面から静かに反戦を訴えているのが、こうの史代さんの描く、被爆体験者を主人公としたこの作品、『夕凪の街 桜の国』です。身近な、現在の話題として読むことが出来ます。原爆の悲惨さは、物心両面からとらえてゆくべきものだと思いました。
ぜんたい この街の人は 不自然だ
誰もあの事を言わない
いまだにわけが わからないのだ
わかっているのは「死ねばいい」と 誰かに思われたということ
思われたのに生き延びているということ
そしていちばん怖いのは あれ以来 本当にそう思われても仕方のない 人間に自分がなってしまったことに
自分で時々 気づいてしまう ことだ
(中略)
あれから十年
しあわせだと思うたび 美しいと思うたび
愛しかった都市のすべてを 人のすべてを思い出し
すべて失った日に 引きずり戻される
おまえの住む世界は ここではないと 誰かの声がする
(中略)
十年経ったけれど 原爆を落とした人はわたしを見て 「やった!またひとり殺せた」 とちゃんと思うてくれとる?
ひどいなあ
てっきりわたしは 死なずにすんだ人 かと思ったのに
ああ 風……
夕凪が終わっ たんかねえ
このお話は まだ終わりません
何度夕凪が 終わっても 終わっていません
 多くの人は、生まれてきたこと、そして今を生き、これからも生きてゆくことを当たり前のように思っていますが、「死ぬのも苦、生きるのも苦」という境涯の人もいるのだと、切ない気持ちになりました。自分がそういう立場なら、「こんな人生、なぜ生きねばならないのだろう」と思うに違いありません。
 しかしよくよく考えてみれば、いつか死んでゆかねばならないのは全人類平等であり、罪悪を重ねずしては生きてゆけないことは、殺生一つをとってみても明らかなことです。被爆者も、健常者も、老若男女、貴賎貧富の差なく、皆、この実相に変わりはありません。
 戦争といっても、不幸になりたくて始める人はいない訳ですから、反戦運動の根底には「生きるとは」「幸せとは」という問いがまずなければならないと思います。
 さて、話戻って先述したSさんに「元気の源は?」と尋ねると「うちは安芸門徒じゃけ」と一冊の本を渡されました。そのものずばり『なぜ生きる』。安芸門徒とは浄土真宗の信者のことですが、この本の後半は「親鸞聖人の言葉」となっています。以前読んだことがありますが改めて読み返してみたいと思いました。

東野圭吾~手紙

手紙(原作)
東野圭吾さんの作品は、他には、ドラマ化された『白夜行』と、直木賞受賞作品『容疑者Xの献身』、そして『赤い指』を読んだことがあります。どれも秀作ですが、この『手紙』は、その中でも一番心に残りました。
 最初、兄弟愛を描いた作品かと思いながら読んでいましたが、テーマは「偏見と差別」といったところでしょうか。それを象徴するかのごとく、あの名曲が効果的なメタファーとして使われているのが印象的です。
 物語は、弟思いの剛志が、意図せず老婆を殺してしまう場面から始まります。実は『赤い指』を読んだとき、「『容疑者~』のパクリではないか」と思ってしまったので、正直、「またこのパターンか」とも思いましたが、さすがは東野圭吾。その後、読者に大いなる難問を投げかけるのです。
 兄への複雑な思いを抱きつつ、進学、就職、恋愛など、必死に生きる弟の直貴。しかし、成功まであともう一歩、というところで「犯罪者の弟」という動かし得ぬ事実に行く手を阻まれる。読者は、兄から届く「ほのぼの」とした手紙に、次第に怒りを覚え、直貴に感情移入してゆきます。そして彼は、一大決心を……。
 とにかくストーリーがリアルなんですよね。いつ自分が事件の被害者になるか分からないし、加害者にもなり得る。あるいは身近な人間になるかも知れない。「そんな時、君ならどうする?」と筆者から問いかけられているようです。誰もが差別を嫌い、偏見を醜いものだと思っていながら、果たして潔癖な人間など存在するのだろうか?自分ならどうするだろうか?と考えずにおれませんでした。  視線を内側に向ければ、否定しきれない偽善的な自己、そして理想と現実のギャップを見せつけらるようです。
 この作品の登場人物は、皆、一生懸命、幸せを求めて生きています。特に、直貴は人一倍強く、逞しく自分の道を切り開いて進んでいるのです。しかし兄の犯した罪が弟にも影響を及ぼしてしまうのは、理不尽とは思いつつも、これが現実なのかと認めざるを得ません。  誰もが幸福を求めて生きているのに、そうなれない人間が出てしまうのはなぜか?  人の幸・不幸は何によって決まるのか?  差別や偏見のない社会など、実現可能なのか?  そもそも幸福とは一体何なのか?
 色々考えさせられる『手紙』でした。東野圭吾も難しいテーマに果敢に取り組んでいるなあ、とその執筆意欲に頭が下がるばかりです。(作品の多さにも)
 ちなみに私はこちらの装丁の方が好きですが、兄貴の文章が見える方も捨てがたいですね。温かみのある文字が、怒りのやり場を見失わせてしまう……(涙)



(参考) パンドラさんのブログ よしさんのブログ 扉のむこう 沖縄日和 (続きを読む…)

Filed under: ひ:東野圭吾  タグ: , , , , , , , , , , , , , , ,   charlie432 23:06  Comments (8)
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