蓑豊 ~ 超・美術館革命―金沢21世紀美術館の挑戦

 旭山動物園の美術館版とでも言いましょうか、人口46万人の金沢において、年間130万人の来館者を誇り、ルーヴル美術館の館長を驚嘆させたという金沢21世紀美術館。地方都市の美術館は、年間5~6万入れば良い方だと知ると、130万というのが如何にすごい数字かが分かります。「分かりにくい」という現代美術のイメージを払拭したこの美術館は兼六園の斜向かいに位置し、日本を代表する名所の一つとなり得るだろうと思いました。その特任館長が、本書の著者、蓑豊さんです。
 何よりも共感を覚えたのが、子どもを対象にし、「対話できる」「体感できる」「一緒に遊べる」というコンセプトを掲げているところです。子どもには偏った価値観がない分、美術や音楽に対し、漠然とはしていても、その作品の良し悪しを素直に感じる力があると思います。いわゆる権威や伝統、誤魔化しの通用しない相手です。その子どもを喜ばせることが出来れば、その美術館には「魅力がある」と言えるのでしょう。
 しかし、どんなに素晴らしいものでも、クチコミや宣伝がなければ誰の目にも触れません。そこで、子どもが大人を誘い、家族連れで何度も訪問するという図式を確立させたり、無料ゾーンから有料ゾーンへ客をさりげなく誘導する仕掛けを組み込むなど、従来のやり方にとらわれない斬新なアイディアで挑戦しています。円形ガラス張りの建物もその一つ。古都金沢にて、美術館という敷居の高い文化活動をここまで庶民的にした業績は、革命的でもあります。
 経済学者ガルブレイス「これからの日本はGNP(グロス・ナショナル・プロダクト)ではなく、GNE(グロス・ナショナル・エンジョイメント)を伸ばすべきである。どうしたらもっと楽しめるかという、知的産業に日本は取り組まなければならない」という言葉が引用されていますが、その指標となるのが子どもの心の豊かさであると思います。陰湿ないじめや、殺人、少年犯罪の低年齢化など、様々な問題点が浮き彫りになってきている今、日本の社会に必要なものは精神的充足感なのではないでしょうか。
 蓑さんの着眼点は、一美術館の成功にとどまらず、教育論にまで及んでいると思います。その中でも「なるほど」と唸ったのが以下の一節です。
●小学4年生がターゲット (前略)やはり子どもたちというのは非常に感受性が強い。ちゃんと説明してあげれば、すぐに理解する。いろいろなものが詰み込まれてしまった大人よりも頭が柔らかく、先入観もないし、怖さもないし、好奇心が強いから、作品の本質をすぐに感得することができる。私は彼らを見ていて、やっぱり子どもはすごいなと、つくづく感じた。  しかし今は、招待するのは全小中学生ではなく、小学校4年生だけにした。なぜ小学校4年生なのか。  全小中学生を招待して彼らの反応を観察したとき、私は感じたことがあった。やっぱり1、2年生では、まだ集中力がないので、ここで作品に触れたことをあまり覚えていないだろう。5、6年生もダメ。中学になったらもっとダメになる。なぜか。5、6年生になると、異性に興味を持ち始めるからだ。美術館に来ても、好きな異性ばかり気になって、作品を見るどころではない。
(中略)
 この4年生招待を、これから10年続ける。(中略)そして10年後、この金沢がどう変わるか。すごいことになると思う。ノーベル賞がいっぱい出ても不思議ではない。
(中略)
 経済が文化を支えると考えるのはもう時代遅れで、これからは芸術や文化が経済や社会を支え、活気づけていくという発想に切り替えなければならない。(中略)やっぱり10年、20年、30年のスパンで考えなければいけない。  そのために、子どもに夢を託すのだ。
 そういえば自分が音楽に興味を覚えたのも、小4の時、授業で聞いたモーツァルトの交響曲第40番がきっかけでした。その時は単に「あ、知ってる!」というだけで大喜びでしたが、今思えば、音楽の楽しみを教えて下さった先生に感謝です。名前は忘れてしまいましたが、太ったオバチャンで、好きな先生の一人でした。  優れた指導者とは、知識や技術を巧みに伝えることよりも、一人一人のモチベーションを高めることの上手い人ではないかと思います。「名選手、必ずしも名監督ならず」たる所以です。
「経済が文化を支えると考えるのはもう時代遅れで、これからは芸術や文化が経済や社会を支え、活気づけていく」という信念、自信があればこそ、金沢21世紀美術館の急成長があるのだと知らされました。

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目次:
第1章 美術館が街を変えた  「ルーヴル美術館」の視察団  美術館は「市民の応接間」  キーワードは「子ども」  文化が街を作る  知られざる現代美術の楽しさ  伝統の街に宇宙船が出現  思いは美術館を超えて
第2章 美術館にも経営哲学を!  集客のために知恵をふり絞る  絶えず発信を続ける  頂点に立っても気を緩めない  人を説得するには
第3章 美学と経営はこうして学んだ  美への目覚め  はじめての買い付け  カナダで経験したファンド・レージング  資金集めはあらゆるツテを頼る
第4章 見せ方次第で人は集まる  敷居の高くない美術館を  学芸員が主役  魅力ある展示とは
第5章 本物を見せなければ人間は育たない  子どもの心を豊かにするには  子ども目線の美術館作り  小学4年生がターゲット
第6章 美術と日本人  日本の美術館に足りないもの  さまざまに利用できる美術館  美術は異文化のコミュニケーション言語  お金をかけない宣伝を  ボランティア活動の日米の違い  美術の背後にあるもの  美術館で学び、生きる力を得る
対談 蓑豊×村上隆
金沢21世紀美術館年表

発見!

 会社の昼休み決まってすることは、コーヒーを飲むこと。目的は眠気対策以外にありません。だから、味は二の次、三の次、むしろマズイ方が目が覚める!一番安物を。
 ちなみにブラック・無糖です。  飲み方は、猫舌なので、濃い目に作って水で薄めています。最近は、水道水をやめて、ミネラルウォーターで割っています。
 で、ある時、冷蔵庫を見ると、水がなかったのです。でもどうしてもコーヒーが飲みたく、しかも水道水は嫌だったので、、、 (続きを読む…)

Filed under: ★徒然  タグ: , , , , , , ,   charlie432 00:00  Comments (4)
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